市川市動植物園が3月10日に公式Xで発表した、パンチくんへの〝いじめ〟に関する声明。その背景には、日々パンチの成長を一番近くで見守ってきた安永崇課長のある「思い」がありました。
怒られるのは「積極的な性格」ゆえ
SNSで拡散されている「怒られているシーン」。その一部だけを切り取って見ると悲劇的なシーンに見えますが、安永課長はその前後の文脈をこう説明します。
安永課長:「パンチは積極的な性格ゆえに、ときどき鼻を擦りむいたり、ケガをしたりもします。ほかの子ザルにちょっといたずらをして、その子ザルの親ザルから怒られたりというようなシーンもあります」
パンチくんは一方的に攻撃されているのではなく、自らほかの個体に関わり、ときには大胆な行動に出ることもあります。その結果として、サル社会での「教育」を受けているのです。

「切り取られた動画」と、現場のジレンマ
しかし今の時代、衝撃的な瞬間だけが切り取られ、世界中へ拡散されてしまうのです。
安永課長:「一部分が切り取られて、その動画が拡散することで、非常に多くの方からいろんなご意見やご批判をいただいている状況です」
安永課長は、寄せられる批判を真摯に受け止めつつも、パンチの「一生」を見据えているのです。
いま、このタイミングで学ぶ「生きる術」
パンチが「オランママ」こと母親代わりに慕っているぬいぐるみから離れつつある今、本物のサルの社会で生きていくための「ルール」を学ぶチャンスでもあるのです。
安永課長:「群れの一員として、どのように生きていくかということを、このタイミングで学んでもらうことが、パンチが今後ニホンザルとして群れの中で生きていくために必要なことであると思っています」
公式声明にあった、市川市動植物園として「様子を注意深く見守る」という言葉。そこにあるのは、「放置」とは真逆のスタッフによるきめ細やかなケアです。
安永課長:「我々がパンチの様子を観察しながら、パンチのケアをしています。ご心配をおかけする部分もあるかと思いますが、パンチの成長を見守っていただきたいというのが、偽らざる心境です」
安永課長は、パンチくんが困難に立ち向かい、少しずつ群れに溶け込もうとする「成長の姿」を見てほしいと願っているのです。
ライターコメント
実際のサル山を観察していると、パンチくんの日常の大部分は平穏に過ぎていきます。ときにほかの個体から叱責を受ける場面もありますが、それはほんの一瞬の出来事にすぎません。しかし、その断片だけを切り取った動画が拡散されることで、多くの人が不安を抱き、それが大きなうねりとなるのが現代のSNSの側面でもあります。私たちの何気ない反応が、パンチくんが群れに馴染もうとする歩みを期せずして妨げてしまう可能性も否定できません。
<ライタープロフィル>ゆんち
2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。
現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。












