年間来園者数が過去最高の34万人を突破し、日本中から注目を集める「市川市動植物園」(千葉県)。 その熱狂を支えているのは、ニホンザルのパンチくんだけではありません。公式Xから発信される、〝中の人〟こと安永崇課長の「誠実すぎる言葉」が、多くの人の心を動かしているようです。温かな言葉を選び、動物たちの日常を守ることを第一にしつつも来園者に寄り添う。そんなSNS担当者の言葉選びの裏側に迫ります。
「禁止」で終わらせない、魔法のフォロー
多くの人が集まる場所では、どうしても「ルール」の周知が必要になります。 例えば、開園直後の安全確保。市川市動植物園でも「早速で恐縮ですが、昨日、開門と同時に 多勢の方がサル山に走って向かっていました。 危険ですし動物たちも驚くのでおやめください」という注意喚起が投稿されました。しかし、ここからが市川流の真骨頂です。
その日の閉園後、公式Xにはこんな投稿が。
公式Xより:「開園ダッシュする方は「ゼロ」でした。 皆様のご協力に頭の下がる思いです」
禁止事項を伝えるだけでなく、協力してくれたことへの感謝をしっかりと言葉にする。これによって、来園者は「一緒に園の安全を作っている」という気持ちになれるのではないでしょうか。この〝ポジティブな報告〟こそが、ファンをリピーターに変える魔法なのかもしれません。
痛みを共有し、絆を深める「勇気」
ときには、耳を塞ぎたくなるような出来事も起こります。サル山に人気が集中する中、混雑緩和のために導入された最前列の「10分ルール(観覧制限)」。このルールを守るようスタッフが注意した際、公式Xでは「今日は飼育員や警備員に対してお怒りの方が。 最前で動かず、注意すると『こっちは金払ってんだ』と。至らずすみません」という報告がありました。
SNSではその直後、「市川市動植物園は悪くない」などフォローする投稿が殺到したのですが、それに対してもすかさず…
公式Xより:「昨日の投稿に大きな反響がありました。 ご心配をおかけして申し訳ありません。 多くの皆さんはルールを守ってくださっています」
トラブルを隠さず、かつ感情的に煽ることもせず、常に「応援してくれる人々」へ視線を向ける。その真摯な姿勢が、「スタッフを守りたい」「がんばれ市川市動植物園」というファンの結束力を強めたのは間違いありません。
忙しいときこそ、現場の「今」を届ける
来園者が10万人も増えた2025年度。現場は想像を絶する忙しさだったはずです。それでも、公式SNSはまめに「現地の情報」を配信し続けました。
「今の混雑状況はこれくらいです」「今日は少し空いていますよ」 こうした何気ない、けれど来園者にとって本当に必要な情報をリアルタイムで発信し続ける。その「まめさ」の根底にあるのは、「せっかく来てくれる人に、最高の一日を過ごしてほしい」という、シンプルで強いホスピタリティです。
パンチくんを見に市川を訪れるとき、私たちはすでにSNSを通じて、園のスタッフさんたちとも「友達」のような気持ちになっているのかもしれません。
ライターコメント
市川市動植物園の〝中の人〟のSNSは、単なる広報ツールではなく、園とファンを結ぶ「心のホットライン」なんだなと改めて感じました。特にスタッフさんへの暴言があった際、その後のフォロー投稿でファンを安心させてくれたこと。あの優しさがあるからこそ、私たちはこの園を全力で守り、応援したくなるんですよね。
<ライタープロフィル>ゆんち
2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。
現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。






