2月28日の土曜日、東京・新宿の「芳林堂書店」高田馬場店8Fのイベントスペースで、「KukuriNezi」(ククリネジ)というイベントが開催されました。
なんらかの文学賞受賞歴があるか、商業作品を出版しているプロ作家のみが参加できる自作即売会で、11時30分~16時30分までの5時間にわたって行われました。
今後も、2か月に一度の開催が予定され、次回は、4月25日(土)の開催となり、こちらもすでに、日々情報がアップデート中です。

ミステリ作家の森晶麿さんが主宰する「ねじの市」プロジェクトの一環として、芳林堂書店のスペースを使用する「KukuriNezi」というイベントの開催が決まり、応募の中から出展者を決めました。

こちらのテーブルの真ん中左上におかれているのは、同日に発売された、芳林堂書店高田馬場店によるプロ作家のZINE「ワッシャー」です。
また、覆面作家の舞城王太郎氏への愛を公言するSF作家金子玲介さんと、主宰の森晶麿さんによる「ディスコ探偵水曜日」のトークイベントも満席で立ち見が出ていたほど盛況でした。
閉会時には、完売の札を掲げる作家さんもいるなど、第一回目の開催にも関わらず、会場は終始賑わっていました。
「KukuriNezi」とは
- 商業デビューしている小説家・作家だけが参加でき、自作を机に並べて頒布する即売会
- 2か月に一度のペースで開催が予定されており、今後も、すでに、4月や6月の開催情報がアップデート中
- 入場料は1,000円で、ねじのジンくんのキャラクターステッカー付き。いったん入場すれば、再入場も可能

何ができるイベントか
- プロ作家が「商業とは少しちがう形」で作った文学作品を直接手に取って買える文芸のマーケット
- 作家本人がブースに立っているため、感想を伝えたり、質問したりと、読者が作家と直接話せる交流の場
- 購入した商業書籍やZINEに、その場でサインをもらえるチャンスも用意(対応は作家ごとに異なる想定)
コンセプトと雰囲気
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ミステリ作家・森晶麿さんが発起人で、「テーマでくくったプロ限定の立体文芸誌=ZINE市場」として企画
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「どこかの街に現れる立体文芸誌」「NEZIを巻き、ZINEを撒く」というコピーが掲げられ、文芸シーンに新しい熱狂と、作家と読者の新しい関係をつくることをめざしたイベント
- 3つのテーマは、「特殊なおシゴト」「○○出没注意」「やめられない止まらない」
初回の体験レポート

こちらは、作家の永原晧さんのブース。海洋冒険小説『コーリング・ユー』で第34回小説すばる新人賞を受賞しています。『SERVANT』を立ち読みさせていただくと、その物語の世界にひきこまれ、立ち読みをやめることができず…。購入したところ、なんと、サインまでいただいてしまいました。

ラノベ作家の三門鉄狼さんのブースです。「完売」の札が、かかっています。

そして、小説家のゆうきりんさんのブースも、すでに「完売」の札が掲げられていました。

悠井すみれさんの『高き空より虹の撮る』、塚本はつ歌さんの『気づきの切りとり』、永原晧さんの『SERVANT』、芳林堂書店のZINE『WasHeR』などです。
こちらのお土産はほんの一部で、手にとった本、すべて買ってしまいそうになるほど、魅力的なものばかりでした!無料配布の冊子などもあり、さまざまな作家の魅力に触れられる機会にもなっています。

作家のみなさんのほとんどが、和気あいあいとして、和やかなムードで、非常に会話しやすい雰囲気でした。
「KukuriNezi」主宰の森晶麿さん

「KukuriNezi」企画・開催の動機について
森晶麿さんは2011年、『黒猫の遊歩あるいは美学講義』で第1回アガサ・クリスティー賞を受賞。同作から始まる「黒猫シリーズ」で多くの読者を獲得し、現在も精力的に作家活動を続けています。
KukuriNeziの企画・開催には、商業作家を取り巻く環境への問題意識があったそうです。刊行に伴うトークイベントは、必ずしも十分な収益につながるとは言いがたい現状もあり、出版社を介するだけでなく、作家自身が企画や運営に直接関わる機会を広げたいという思いが背景にあったということです。
そうした動きの延長線上にあるのが、「作家によるライブ的な活動」をより活発にしていきたいという想いだったと森先生は教えてくれました。読者と直接向き合い、場を共有すること自体を価値とするような試みを、単発ではなく継続的な文化として根づかせることが期待されています。
さらに、KukuriNeziには、同人イベントである「文学フリマ」に見られるような熱狂を、商業作家主体の場にも持ち帰りたいという意図も込められています。作家と読者が近い距離で出会い、新たな関係性が生まれる場をつくること——それが、このイベントの核にある発想ともいえそうですね。
第1回目を終えてのインタビュー
さらには、第1回を終えたタイミングで、森晶麿さんにいくつかの質問に答えていただきました。
●第一回を終えての感想や、今後に向けて
「大型マーケットの〈熱狂〉を日常に組み込む、作家の食い扶持にしていく、という第一目標としては及第点ギリギリ。まだこれからというところですが、一方では奇跡のような素晴らしい一日になったとも感じています。これからさまざまなことが動いていくのだ、という予感を強くした一日でした」
●ねじのジンくんのイラストは、どなたによって描かれたものなのでしょうか?
「ジンくんのイラストは、来年から美術系の高校に通う予定の次女が担当しております。ねじのジンくんは、本が好きなねじで、とくに同人誌が好物です」
ジンくんのイラストがご家族によるものだと知り、思わず驚かされました。イベントの世界観が、こうした形で身近なところから生まれている点も印象的です。
森晶麿さんは、5人家族で、埼玉県から香川県高松市へ移住しながら執筆活動を続けています。育児と創作を並行しつつ、ご家族を制作や活動に巻き込んでいくその姿勢には、生活と表現が地続きにある現在的な作家像が感じられました。
次回の開催は、4月25日(土)の予定で、ねじの市X公式アカウントでも、詳細が告知されています。
【告知】#KukuriNezi公式
出店ブース見取図ができたねじ~。
これみてお目当ての作家さんのところまで迷わず行ってほしいし、見本のコーナーで新たな推し作家を見つけてほしいねじねぇ。もう4月25日は高田馬場で決まりねじ! pic.twitter.com/3WAOHt0Cyw— ねじの市 (@Nezinoichi) April 21, 2026
またもや選りすぐりの商業作家のみなさまによる直売と、芳林堂書店発の文芸誌(ZINE)『WasHeR vol.2』も、前回よりさらに分厚くなっているという、その内容に注目です。
漫才コンビDarkL(作家の蘇部健一さんと、編集者の菊池篤さん)による漫才披露や、スペシャルゲストトークイベント「五条紀夫、笑いとミステリを大いに語る」も予定されています。
文芸ファンはもちろん、ミステリファンにとっても見逃せない内容となりそうです。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
ライターコメント
芳林堂書店高田馬場店には、筆者も、長年、通ってきました。2025年の「直木賞・芥川賞両賞受賞者なし」の折にも、芳林堂書店高田馬場店は、独自のイベントを実施。電子書籍も主流になりつつあり、紙の本の売れ行きの低迷がささやかれ、古くから学生街として有名な高田馬場もその限りではなく、近年、いくつかの書店が閉店に見舞われています。
そうした状況の中で、芳林堂書店高田馬場店は、作家と読者の距離を近づける場を継続的に生み出し続けています。その姿勢は、KukuriNeziが目指す「ライブ的な文芸の場」ともどこか重なって見えました。高田馬場における読書文化の一端を担い続ける存在として、今後の展開にも注目したいところです。






