千葉県市川市動植物園で、人工哺育で飼育員によって育てられたニホンザルのパンチくん。群れへの合流が進む中で、SNS上ではパンチくんがほかのサルから攻撃を受けている一部分だけを切り取った動画が拡散され、国内外から心配の声が寄せられています。
これに対し、同園は3月10日、公式Xで「パンチが『いじめられている』とされる動画について」と題した公式声明を発表しました。そこには、パンチの将来を想う切実な願いが綴られています。
「虐待」ではなく「社会のルール」
まず園は、動画で見られる行動が、人間の価値観で測る「いじめ」とは本質的に異なるものであることを明確にしました。
公式Xより:「ニホンザルの群れは、明確な社会階層を持つ専制社会を形成しており、支配的な個体が下位の個体に対して『躾け』をすることがあります。これらの行動は人間の『虐待』とは異なります」
1948年以降の日本の霊長類学の研究に基づき、こうした行動は自然界で普遍的に起こるものであると説明。パンチだけが標的にされているわけではないことを強調しています。
変化する群れの関係性と、園の対応
一方で、パンチを取り巻く環境は決して過酷なだけではありません。園によれば、パンチを世話したり、一緒に遊んだりする仲間も確実に増えているといいます。
公式Xより:「最近、パンチがぬいぐるみから離れて生活する時間が増えたのはそのためです」
しかし、一部の個体による干渉が強まったことを受け、園は3月8日から迅速な措置を講じています。
公式Xより:「順位の高い個体数頭から手を出される機会が増えてきたことから、私たちは3月 8日より一時的に、その個体数頭を群れから離しました。当面、この状態で様子を注意深く見守りたいと考えています」
これは、パンチを群れから出すのではなく「パンチに強く当たる側」を一時隔離するという、群れでの生活を維持するための選択です。
なぜ「パンチを群れから離さない」のか
また「パンチを隔離してほしい」という意見も寄せられていることを明らかにした上で、園はこのように説明しています。
公式Xより:「群れでの生活に慣れてきたパンチを、今、群れから離すことは、生涯群れに戻れず生活し続けなければならないリスクを生み出します」
サルの仲間にとって、群れから外れることは、一生を孤独に過ごすことを意味します。
利益のためではなく、パンチの未来のために
声明の最後には、一部の誤解に対する見解についても記されていました。
公式Xより:「『躾け』 の様子を漫然と放し、人々の同情を買うことで当園の集客や利益に繋げようとする意図はありません。」 「パンチを心配する気持ちは、私たちもみな様と同じです。飼育員やスタッフ一丸となって、今後もパンチが群れのサルとして健全に暮らしていけるよう飼育を続けてまいります」
■市川市動植物園 公式X
市川市動植物園(公式)(@ichikawa_zoo)
ライターコメント
パンチくんがぬいぐるみの「オランママ」から卒業し、仲間に揉まれながら「一頭のサル」として生きていく道は、険しくとも、パンチくんがサルとして一生を全うするためには不可欠なステップなのだと思います。すべての判断は、パンチくんを誰よりも近くで見守る市川市動植物園に任せ、私たちはその自立への道のりを静かに応援し続けたいと思います。
<ライタープロフィル>ゆんち
2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。
現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。












