市川市動植物園公式Xより

「ダメ」を「お願い」に変える言葉の魔法 市川市動植物園に学ぶ、人を動かす誠実な仕事

By - emogram編集部・ゆんち
アニマル

世界中から応援の手紙が届き、連日多くの来園者で賑わう市川市動植物園。一頭の子ザル「パンチくん」が起こした奇跡は、SNS特有の「偶然のヒット」に見えるかもしれません。しかし、連日多くの来園者を迎え入れる市川市動植物園の対応を紐解くと、そこには計算を超えた「プロの仕事」と、徹底した「誠実さ」が見えてきます。

「禁止」を「協力」に変える、言葉の魔法

公立の施設で来園者が急増した際の広報は、通常「混乱を防ぐための規制」が中心となります。「〇〇しないでください」「立ち入らないでください」といった禁止命令が並ぶのが一般的です。

しかし、市川市動植物園の安永崇課長率いるチームが発信する言葉は違います。「混雑しているので10分で交代していただけると助かります」「ベストポジションはないので、空いている場所で待つのがいいですよ」といった、来園者を不快にさせない温かい言葉選びが目立ちます。

この「お願い」のスタイルこそが、市川市動植物園の温かさ。ともすると、人込みや行列で混乱が生じやすい現場でもファンとの温かなコミュニケーションを図り、結果として自主的なマナー向上を生む〝市川市動植物園流〟コミュニケーションの根幹になっています。

偶然を「必然」に変えた準備

ブームは突発的だったかもしれませんが、それを受け止める土壌は、実は1年以上前から耕されていました。

たとえば、園内の利便性を高めるためのキッチンカーの誘致、そして、サルたちのより良い環境整備のためのクラウドファンディングの成功。これらはパンチくんが話題になる前から、安永課長たちが「どうすればもっと良い園になるか」を考え、着実に積み上げてきた施策です。

ブームが起きた際、園の規模から考えれば規格外の人が押し寄せても、混乱することなく「散策や食事も楽しんでください」と余裕を持って案内できたのは、こうした「見えない下準備」も功を奏しました。市川市動植物園が、単なる一過性の流行で終わらない理由はここにありそうです。

謙虚さが生む、最強の広報力

安永課長が〝中の人〟として配信する公式Xを見ていると、その「謙虚さ」に驚かされます。それは、実際の園内での対応も同じ。多忙を極める中でも一人ひとりに対して丁寧に、心を込めて対応し、来園者から声を掛けられればにこやかに回答する姿がとても印象的でした。

来園者や報道陣にも、「なかなかご希望に沿えず申し訳ございません」と頭を下げる安永課長。この常にどんな相手でも謙虚に、心を込めて対応する姿勢が、SNSの画面越しにも伝わる同園の「温かさ」の正体であり、信頼へとつながっているのではないでしょうか。

パンチくんのかわいさに惹かれて訪れた人々が、いつの間にか「市川市動植物園そのもの」を応援したくなる。そこには、派手な演出や宣伝よりも、もっと確かな「一人ひとりに寄り添う誠実さ」という、市川市動植物園が大切にしてきた想いがあるようです。

ライターコメント

市川市動植物園が愛される理由は、もちろんパンチくんがきっかけではありますが、この安永課長を始めとしたスタッフの皆さんの温かさにあるように思います。これからも市川市動植物園が市民の憩いの動植物園として居心地の良い場所になるよう、利用者である私たちも協力できることを考え、実行していければなあと感じています。

<ライタープロフィル>ゆんち

2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。

現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。