新しい制服に身を包んだ学生や、やや緊張したリクルートスーツの新社会人が街に溢れる4月。出会いと別れの季節ですが、いま市川市動植物園のサル山でも、一つの「卒業」へ向かう姿があります。母ザルの育児放棄により、人工哺育で育てられたニホンザルのパンチくん。今、パンチくんは育てられた飼育員から自立し、群れで暮らすため懸命に頑張っています。
3時間おきの授乳から始まった人工哺育
パンチくんが誕生したのは昨年夏のこと。放置されているところを飼育員が発見し、その後は担当の飼育員2人が昼夜を問わずに人工哺育で育てました。生後間もなくは約3時間おきの授乳で、それこそ寝る間もなかったといいます。
飼育員の愛情を受け、すくすく成長したパンチくん。今年に入ってからは、群れの中の穏やかなメスのサルとの〝慣らし〟期間などを経て、いよいよ群れ入りを目指すことになりました。
パンチくんは母ザルがいないため、母親代わりのオランウータンのぬいぐるみと常に一緒にいます。当初、そもそも見たことのない子ザルが大きなぬいぐるみを抱えた姿はほかのサルには異様に映ったのかもしれません。
加えて、積極的な性格のパンチくんは躊躇なくサル山のサルにちょっかいを出し、怒ったサルから攻撃を受けることもありました。
そんなパンチくんが、ごはんの時間に出てくる飼育員に〝ギュッ〟としがみつく姿を見て安堵したファンも多いのではないでしょうか。しかし、飼育員にとっては必ずしもこれが〝安心〟ではなかったのです。
目指すゴールは飼育員からの自立
ある日、飼育員の1人が観覧エリアに出てきて説明するシーンがありました。
飼育員:「きょうは群れの方でずっとごはんを食べていたのが見られたと思います。いつもは飼育員にくっついて食べていると思いますので、きょうは成長の日なので、温かく見守ってください」
また最近では、オランママから離れて仲間とのじゃれ合いに夢中になるシーンも増えました。 パンチくんが人間を頼らなくなり、サル山の群れに入っていくことこそが、飼育員を始め市川市動植物園のスタッフが願っている展開なのです。
いつか来る〝卒業〟を信じて
4月の青空の下、パンチくんは今、一歩ずつ人間から離れて、サル山の群れに馴染もうとしています。パンチくんがオランママ、そして飼育員にしがみつかなくなる日をスタッフは願っているのです。
パンチくんの〝卒業〟はいつになるかはわかりませんが、その日が来ることを信じて、引き続き静かに見守っていきたいと思います。
ライターコメント
「手から離れてくれたときが卒業」。そんな愛情を貫く飼育員さんたちに、プロの真髄を見た気がしました。私たちからすると、オランママに甘えたり飼育員さんの手や足にしがみつくパンチくんがかわいくてたまらないのですが…。この3月は、まだ完璧な〝卒業〟にはなりませんでしたが、その日は着実に近づいてきている気がします。
<ライタープロフィル>ゆんち
2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。
現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。






