2日間で約8,000人が来園した市川市動植物園(千葉県)の週末。たくさんの人がサル山周辺に集まる中、そこで市川市動植物園が仕掛けたのは「マナー標語の公募」でした。初めての試みでしたが、注意喚起の枠を超え、ファン参加型の新しいイベントとして注目を集めました。この試みがなぜこれほどまでにファンの心を動かしたのか。そこには「押し付け」を「楽しみ」に変える、見事な仕掛けがあったからではないでしょうか。
観客から「運営のパートナー」へ
通常、施設のマナーを呼び掛ける看板は「〜しないでください」「〇〇禁止」など強い言葉になりがちです。しかし、今回市川市動植物園が選んだのは、SNSを通じて「10分で最前列を交代する」ことを呼びかける標語をファンから募り、適切な伝え方を一緒に考えるという方法でした。
標語を考え、応募する。そのプロセスそのものがファンにとっても一つの楽しみとなり、採用されれば現場で即座にプラカードとして掲示されるのも新鮮でした。このスピード感ある体験が、ファンの中に「自分たちも園の運営に関わっている」という当事者意識を生み出したようです。

「ただ見に来る人」から「一緒により良い施設を作る人」へ。この意識の変化が、混雑するサル山に穏やかな空気をもたらしたようです。
「押し付け」を感じさせない、ファンの言葉の力
今回寄せられた標語の数々は、どれも園側の「管理の視点」ではなく、ファン側の「愛情の視点」で綴られていました。
「パンチくんはレンズじゃなくみんなの笑顔を見てますよ」
園が一方的に決めたルールではなく、ファン同士で考えた「こうあればもっと楽しいよね」というアイデアだからこそ、誰もが自然と楽しみながら輪に加わることができたようです。
みんなで楽しむ「聖地」のアップデート
このアイデアを実行したのは、〝中の人〟こと安永崇課長。ファン考案のプラカードを手に、サル山を回ってマナーを呼びかけました。
一方的に上からルール厳守を強要するのではなく、ファンにも参加してもらい、いかにしてみんなが進んでルールを守る空気を作るか。そんな考えの末に、このアイデアが生まれたようです。
パンチくんの成長を見守るのと同じように、自分たちのマナーでこの場所をより良くしていく。この参加型の応援スタイルは、これからの動植物園をはじめとした施設のあり方を大きく変えていくのかもしれません。
ライターコメント
「良い標語を教えてください」と言われると、ついワクワクして考えてしまいますよね。この「参加の楽しさ」を巧みに取り入れた安永課長の手腕、そしてそれに見事な名回答で応えたファンの皆さん。市川市動植物園という場所が、多くの人によってより良い場所になっていることを強く感じたエピソードでした。
<ライタープロフィル>ゆんち
2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。
現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。






