市川市動植物園公式Xより

ぬいぐるみはもういらない?パンチくんが摩擦を越えて手に入れた「居場所」

By - emogram編集部・ゆんち
アニマル

市川市動植物園のサル山を見渡したとき、かつてなら「あ、パンチくんだ」と一瞬で判別できました。ひときわ黒く小さな体、そして片時も離さなかった「オランママ」ことオランウータンのぬいぐるみがパンチくんのトレードマークだったからです。しかし最近、その景色に変化が訪れています。

「特別」から「一員」へ

まず気が付くのは、外見の変化です。 かつてほぼ黒に近いこげ茶だった体毛は、ほかの子ザルたちの色に近づき、だいぶ薄くなってきました。飼育員からの「モリモリ食べています」という報告通り、ごはんをよく食べているようで、体格も同年代の子ザルと同じくらいまで成長しています。

そして何より、オランママを引きずる姿を見かける機会が減りました。ほかのサルに威嚇されたときや、寂しくなったときなど、かつてはしょっちゅうオランママのところに駆け寄り、ギュッと抱きしめていました。最近はそんなシーンがめっきり減っています。

公式Xで人気の投稿「パンチをさがせ!」=市川市動植物園公式Xより

積極性という〝諸刃の剣〟

パンチくんの個性として挙げられるのは、「物怖じしない積極的な性格」にあります。段階的に群れ入りを目指していますが、群れに入った当初、その積極的な性格が裏目に出ることもありました。ほかのサルにちょっかいを出して威嚇されたり、ときには大きな体のサルに振り回されたり…。その衝撃的な光景がSNSで拡散され、市川市動植物園には「パンチくんを助けて!」という声が殺到したこともありました。

安永崇課長は当時、emogramの取材に対し、「積極的で物怖じしないパンチの性格は群れ入りに適している可能性もありますが、一歩間違えればほかのサルの反感を買ってしまう。慎重に観察していきます」と話していました。

摩擦の先に見つけた「安定」という居場所

最近のサル山を観察していると、かつての「摩擦」は減りつつあるように思います。ほかの子ザルとじゃれ合い、楽しそうな姿をみせることも増えたパンチくん。激しく振り回されていた時期を経て、パンチくんはもしかしたら、「どこまで踏み込んでいいのか」「どう接すればいいのか」というサル山の空気を学びつつあるのかもしれません。

一般的に、人工哺育で育ったサル、特にオスは群れに馴染むのは極めて困難だとされます。その壁を、パンチくんは飼育員や獣医師など市川市動植物園のスタッフに見守られながら、乗り越えようとしています。

「黒いパンチくん」が「群れの色をしたパンチくん」へと変わっていくのはファンとしては少し寂しくもありますが、引き続き観覧ゾーンからも見守っていきたいと思います。

ライターコメント

「助けてあげて」という声が上がったとき、あえて介入せずに見守り続けた園の判断。そして、その期待に応えるように群れに馴染んでいったパンチくん。その両方に拍手を送りたくなります。ぬいぐるみから少し離れ、泥だらけになって仲間と転げ回るパンチくんの姿が、こんなに早く見られるようになるとは思っていませんでした。

<ライタープロフィル>ゆんち

2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。

現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。