安永崇課長=市川市動植物園(撮影:ゆんち)

【連載まとめ】市川市動植物園・安永崇課長が語る「がんばれパンチ」ブームの舞台裏

By - emogram編集部・ゆんち
ポジ・ネガ

千葉県・市川市動植物園のニホンザル「パンチくん」。人工哺育から群れ入りを目指す姿が世界中で話題となりました。この「社会現象」とも言えるブームを支えたのは、安永崇課長のSNSを通じた誠実な対応でした。本記事では、emogram編集部のライター・ゆんちが安永課長に取材し、4回に分けて執筆した連載をまとめました。安永課長が直面したSNSの爆発的な拡散力、世界中から届いた批判への迅速な対応、そして言葉に込めた哲学を振り返ります。

【第1回】「がんばれパンチ」誕生の背景とSNS戦略

安永課長は、市川市で生まれ育った市役所職員です。2025年4月の着任早々、サル舎改修のためのクラウドファンディング1,000万円という高い目標に直面します。SNSを駆使して目標を達成した経験から、SNSが動植物園の「最強の武器」になると確信しました。

そんな中、育児放棄された子ザル「パンチくん」の人工哺育が始まります。安永課長が考案したハッシュタグ「#がんばれパンチ」には、パンチくんへの応援だけでなく、不規則な生活に耐えながらパンチをわが子のように育てる「飼育員たちへのエール」という思いが込められていました。

詳細記事:「がんばれパンチ」ブームの仕掛け人 市川市動植物園・安永崇課長が語る「SNSの光と影」

【第2回】「衝撃映像」の拡散と世界中からの批判

SNSの「光」は、一瞬にして「影」へと変わります。パンチくんが群れの中で引きずられる数秒の動画が拡散され、世界中から「見せ物にするな」といった厳しい批判が殺到しました。

実際には群れ社会における「しつけ」の一環であり、飼育員が見守る中での出来事でしたが、切り取られた動画は「負の感情」を増幅させました。安永課長はこの危機に対し、140文字では伝わらない飼育員の信念を綴った「画像による声明文」を出す決断を下します。

詳細記事:「巨大な渦」の真ん中で 世界中からの批判、鳴り止まない電話…市川市動植物園・安永課長が直面したSNSの衝撃

【第3回】バズの魔力に抗う「自分たちらしさ」の守り方

「負の感情の再生産」の恐ろしさを痛感した安永課長。刺激的な動画ばかりが拡散されるジレンマの中で、園のアイデンティティをどう守るかに腐心しました。

ブームに乗じたグッズ展開の要望に対しても、安永課長は安易には首を縦に振りませんでした。「今は動物のケアと安全が最優先」と誠実に伝えることで、園を「ビジネスの場」ではなく「命と向き合う現場」として守り抜いたのです。

詳細記事:「負の感情の再生産」が一番怖い バズの魔力と、安永課長が守り抜いた市川市動植物園のプライド

【第4回】投稿ボタンを押す手の震え、言葉の哲学

フォロワー数が19万人を超え、一回の投稿が数十万人に届くようになった今でも、安永課長は投稿ボタンを押す際に手が震えると言います。その震えは、言葉が持つ影響力への責任感の表れです。

安永課長の広報哲学の根幹にあるのは「相手を否定しない」こと。批判や要望に対しても、否定の言葉を使わず、自分たちが大切にしている価値観を丁寧に説明する。その誠実な積み重ねが、市川市動植物園を「世界一温かい園」へと変えていきました。

詳細記事:「この一押しで数十万人が見る…」投稿ボタンを押す手が震える理由 市川市動植物園・安永課長の〝否定しない〟言葉の哲学

ライター・ゆんちのまとめコメント

今回の取材を通じて、パンチくんがこれほどまで人気になり、同時に市川市動植物園そのものも多くの人々から支持を集める理由がよく分かった気がします。

安永課長は「がんばれパンチ」の〝仕掛け人〟と言われますが、決して話題性を当初から狙っていたわけではありません。安永課長の誠実さや温かさ、そしてスタッフの皆さんの熱意。そこに「守るべき小さな命」であるパンチくんが現れ、すべてが重なり合って今の大きなうねりへと繋がったように思います。

また、安永課長は「動物ファースト」「園ファースト」を掲げる一方で、来園者や報道陣への対応も、行政の枠を超えた温かさと迅速さ、そして寛容さに満ちていました。これほどの騒動になれば(たとえばパンチくんが大きなサルに攻撃される動画が拡散された際など)、リスク回避のために「撮影禁止」や「SNS投稿禁止」といった対応をとることもあり得ます。しかし、安永課長はそうした制限を一切せず、しなやかに、かつ一本筋の通った対応を貫きました。

公営施設としては極めて稀なこの姿勢の根底にあるのは、「皆さんに楽しんでもらいたい、市川市を盛り上げたい」という純粋な想いにほかなりません。

ゴールデンウィークを控え、客足が絶えない中でも、子どもフェスティバルの開催や北総鉄道とのコラボなど、次なる賑わいの創出に向けて尽力されている安永課長。そんな安永課長から直接、貴重なお話を伺えたことは、私にとっても大きな財産となりました。この場を借りて、深く感謝申し上げます。

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