少子化にもかかわらず、過熱の一途をたどる受験競争。先の見えない時代に、東京大学へと子供を送り出した保護者へのインタビューから、これからの時代の子育てのヒントを探る連載『東大生を育てたおかん』の2人目にご登場いただくのは、神奈川県に住む50代のあじさいさんです。福祉職の常勤職員として多忙な日々を送りながらも、次男が小学5年生のときに非常勤へ働き方を変えたあじさいさん。そんな彼女の背中を見て育った次男は、見事、東京大学へ現役合格を果たしました。全9回でお届けするあじさいさん編第1回は、働き方を変えた「決断の背景」と、キャリアと子育てに対する前向きな思いに迫ります。
福祉職の常勤…夜勤もある激務で子育て

あじさいさんは、夫と、別の大学に進学した長男、そして5歳年下の次男の4人家族です。次男が小学校5年生に進級するまでは、常勤の職員としてフルタイムでバリバリと働いていました。当時の仕事は、想像以上にハードなものだったといいます。
あじさいさん:「自治体の福祉職として、福祉施設での夜勤もある変則勤務のほか、児童相談所での相談業務などに就いていました。次男が小学5年生に進級するまではずっとフルタイムで働いていました」
常に誰かの人生に寄り添う、責任の重い激務の日々。やりがいはあったものの、「当時は怒涛の毎日だった」とあじさいさんは振り返ります。仕事と育児の両立は、夫や実母のサポートを受けながら、まさに全力疾走で乗り切っていました。
次男が小5になるタイミングで非常勤へ
そんな多忙な日々を過ごす中で、あじさいさんの心に少しずつ変化が訪れます。きっかけは、5歳年上の長男の成長でした。
あじさいさん:「もう少し子供と関わる時間をゆっくり持ちたい、と思ったんです。長男がどんどん大きくなっていく姿を見て、この子が高校を卒業して大学生になってしまったら、家族でゆっくり過ごせる時間なんて、少なくなってしまうのではないか、と考えるようになりました」
かわいい盛りの子供たちと、もう少し落ち着いた時間を過ごしたい。その思いが大きくなり、次男が小学4年生から5年生に上がるタイミングで、長男のときから続けてきた常勤の職を辞めるという決断を下します。
あじさいさん:「そのタイミングで常勤を辞め、週3日程度の非常勤に切り替えました。現在も地元の小学校で支援員として非常勤で仕事を続けています」
仕事を完全に辞めるのではなく、働き方のバランスを変えることで、あじさいさんは家庭の中に「子供たちと向き合うための新しい時間」を作りました。
「犠牲」ではなく自分で選んだ前向きな決断
キャリアをセーブすることに対し、働く母親なら誰もが一度は葛藤を抱えるものです。「子供のために自分が我慢したのではないか」と悩む人も少なくありません。しかし、あじさいさんの口から出たのは、前向きな言葉でした。
あじさいさん:「あの決断に、後悔は全くありません。『子供のために自分のキャリアを犠牲にした』なんて思ったことは一度もないんです。私自身が、子供たちとゆっくり過ごす時間をどうしても欲しかったから、自分で考えて選んだ道ですから」
子供のために我慢したのではなく、自分がどう生きたいかを考えて選んだ働き方。そんなあじさいさんの迷いのない姿勢は、自分の意志で物事を決め、自分で道を決めた次男のお手本になっていたのかもしれません。
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ライターコメント
「キャリアをセーブしたことに1ミリの後悔もない」と語るあじさいさんの言葉が、とても印象的でした。自分の意志で生き方を選んだあじさいさん。そんな親の背中を見て育ったからこそ、次男も迷うことなく自分の道を突き進めたのだと感じました。
<ライタープロフィル>ゆんち
2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。
現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。






