サル山の群れに入るために奮闘を続けている市川市動植物園のニホンザルの「パンチ」くん。そのひたむきな姿で多くのファンを勇気づけていますが、8月中旬、耳や右足裏に咬傷(噛み傷)を負うという出来事がありました。ファンから心配の声が上がる中、8月16日、市川市動植物園の公式Xから異例とも言える「6回にわたる連続投稿」がありました。あれから10日経ち、改めて読み返すと、そこにはパンチくんへの思い、サル山の仲間たちへの思い、そして動物園としての「覚悟」が綴られていたことに気づきます。
「パンチの気持ちが最優先」 寄り添う動物園の姿勢
16日の開園前、市川市動植物園は「複数の個体を群れから離す対応を取った」と報告しました。前夜からスタッフ間で議論を重ねた苦渋の決断だったといいます。
ファンが固唾を飲んで見守る中、続く投稿で明かされたのは、群れ入れという難しい課題に対する動物園の信念でした。
公式Xより:「最も大切なのは、パンチ自身の気持ちです。群れ入れは慎重に行い、無理には進めません。過度な喧嘩や負傷により、パンチの気持ちが挫けてしまわないよう、寄り添うことも動物園の責任と考えます」
この言葉に、どれほど多くのファンが救われたことでしょう。
「パンチ自身の気持ちも大切に考えてくれてるんだな…と思ったら泣けてきてしまいました」というコメントが寄せられたように、画面の前でホッと胸をなでおろした人は少なくなかったはずです。
「悪いサルなどではない」 すべての命を愛する視線
隔離という措置、どうしても「隔離されたサルが悪者」という見方をされがちです。しかし、動物園のスタッフが向き合っていたのは、パンチくんだけではありませんでした。
公式Xより:「本日行った隔離その他の対応により、サル山全体の様子がどう変化するか観察し、次の対応が必要なのか考えたいと思います」
このように、群れを離れた個体たちについても引き続き丁寧に見守っていく考えが示されました。離れることになったサルたちのことも「悪いサル」と呼ばないのはもちろん、そのケアにも力を尽くすという姿勢がにじんでいました。
この投稿に、コメント欄には「悪いお猿さんなんていないです」「どのサルも平等であるべきだね」と、温かな声が寄せられました。

逃げない覚悟「コメント欄は閉じない」
投稿では、年度内のバックヤード拡張や将来的な「サル山の大規模改修、あるいは新たなサル山建設」という将来のサル山の話へと続きました。
そして、一連の投稿はこんな力強い言葉で締めくくられていました。
公式Xより:「返信欄を閉鎖するつもりはありません。 皆様の建設的なご意見を聴き激励を力にして、 スタッフ一同ブレずに進んでまいります。 今後もよろしくお願いいたします」
さまざまな意見が飛び交うSNS、注目度が上がる中でコメント欄にも多くの意見が書き込まれています。それでも、すべてを受け止めながら動物たちのために最善を尽くす。そんな投稿に、ファンからはたくさんの温かなコメントが送られていました。
あれから1週間、パンチくんは今
気になるのは、その後のパンチくんの様子です。
先週末に公式Xで更新された「サル山日誌」によると、パンチくんは冬毛から夏毛への換毛が進み、一時は痩せたようにも見えたそうですが、体重は順調に増えているとのこと。
飼育員からは「日々の『#ごはモ』(ごはんモリモリ)のおかげ」と報告があり、最近はプールで水遊びをする姿も見られるようになったといいます。
ケガの心配から始まった1週間でしたが、今はまた違う穏やかな日常が戻ってきているようです。
■市川市動植物園:公式サイト
ライターコメント
市川市動植物園の6回の投稿。「無理には進めない」「悪いサルはいない」、そして「ブレずに進む」。同園のスタッフのみなさんが、真剣に命と向き合っているということ、そして同時に来園者やファンのみなさんのことも大切にしているということが伝わってきます。パンチくんの傷もそろそろ治ったころでしょうか。パンチくんも、そしてほかのサルの仲間たちも、いつまでも元気にサル山で過ごせるよう、これからも見守っていきたいと思います。
<ライタープロフィル>ゆんち
2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。
現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。
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