市川市動植物園公式Xより

流しカワウソからパンチくんまで 市川市動植物園のアイデアが「世界」を動かす理由

By - emogram編集部・ゆんち
アニマル

パンチくんの存在で一躍有名になった千葉県の市川市動植物園。ここには、一頭いるだけで数千人を集客できてしまうようなライオンやゾウ、キリンといった大型動物はいません。いわゆる〝目玉〟とされる動物は、日本に7頭しかいないスマトラオランウータンくらいでしょうか。あとは、ヤギやカピバラ、アルパカといった動物がのんびりと暮らしています。しかしそんな小規模な市川市動植物園がいま、たくさんの人を惹きつけてやみません。その魅力を探ってみました。

「種類」ではなく「見せ方」で勝負する

市川市動植物園、実はパンチくんが有名になる前から知る人ぞ知る魅力あふれる動植物園です。

例えばコツメカワウソです。小さな体であどけない表情、全国の動物園でも人気のカワウソですが、市川市動植物園では10年以上前、担当飼育員が流しそうめんからヒントを得た〝流しカワウソ〟を発案。カワウソがちょうど入る大きさのパイプでスライダーを作り、そこに水を流してカワウソに滑ってもらうというもの。年間を通して展示されていますが、〝市川市動植物園の夏の風物詩〟として多くのファンが訪れています。

また春からは、カピバラの体にちょうどぴったりのサイズの桶を準備して水を張り、カピバラに入ってもらう「カピ桶」や、昨年から設置されたトカラヤギの「空中散歩」など、なじみのある動物を見せ方一つで楽しい気分にしてくれる工夫が光ります。

「珍しい動物を見に行く」のではなく、「あの子の成長を確認しに行く」。市川市動植物園の来園客は、そんな楽しみ方をしているのかもしれません。

絶妙な「市民との距離感」

さらにSNSでは〝中の人〟が情報を細かく発信し、ときにはお願いや注意事項を言葉を選んで伝える。その熱意とオープンな姿勢も、今の時代に合致したのではないでしょうか。

パンチくんがこれほど愛され、世界中から注目を集めたのは決して偶然ではありません。日ごろから積み重ねてきた動物への愛情と、来園者への細やかな配慮。その土壌があったからこそ、市川市動植物園で奇跡のような物語が生まれ、多くの人がファンになったのだと感じます。

「特別な何か」がなくても、動物と来園者の双方を想う真摯な姿勢があれば、ファンの輪はいくらでも広がる。市川市動植物園はそのことを、みごとに証明してくれました。

ライターコメント

物価高によるエサ代の負担や施設の老朽化など、今、動物園を取り巻く環境は決して楽ではありません。しかし、市川市動植物園の賑わいを見ていると、予算や規模だけがすべてではないのではないか…と思ってしまいます。目の前の一頭をどう輝かせ、来園者にどう届けるか。その「工夫の積み重ね」と、スタッフ一丸となった「実行力」こそが、多くのファンを惹きつける魅力ではないでしょうか。

<ライタープロフィル>ゆんち

2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。

現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。

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