市川市動植物園=(撮影:ゆんち)

市川市動植物園のパンチくんブームの裏にある葛藤 安永課長が胸に誓う「市川市民への恩返し」

By - emogram編集部・ゆんち
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パンチくんの誕生をきっかけに、たくさんの人が押し寄せる人気スポットとなった市川市動植物園(千葉県)。しかしその熱狂の裏で、安永崇課長は一つの大きな「葛藤」と闘っていました。それは、これまで40年間にわたって市川市動植物園を支え続けてくれた「市川市民」への想いでした。

動物園は「レジャー施設」ではないのだということ

市川市動植物園の入園料は、ほかの公立の動物園に比べても安く設定されています。公営施設である市川市動植物園は、単体で見れば赤字であり、不足分は市川市民の「税金」によって賄われています。

安永課長は2025年4月、課長に就任した当初は「動物園はレジャー施設であり、単体で収支を均衡させる方向へ持っていくべきなのではないか」と感じていたそうです。しかし、現場に入り、その考えは180度変わったといいます。

安永課長:「希少な動物の種の保存や、野生に近い状態での展示などを通して、子供たちの学びに繋げる。動物園は、そういった『公共サービス』を担っていると知りました。収支のために料金を上げれば、それが子供たちの『学びの機会』を奪うことになりかねないのです。最近は、値上げに関しては慎重に考えなくてはと思っています」

「それでも市川市動植物園は少し安いかなとは思いますよ」(安永課長)と笑いつつ、最終的な決定権は市議会にあるとした上で、「動物園が持つ『教育と福祉』の側面を何より大切にしたい」と話しました。

半数以上が海外や市外からの来園者

しかし、現在、パンチくんブームによって園内は連日大盛況。来園者の半分以上を海外や市外からのお客さまが占める日も珍しくありません。そんな状況で、安永課長の耳には、地元市民から「行きづらくなった」という声が届くこともあるといいます。

安永課長:「『市川市の動植物園なのに、気軽に行けなくなった』という声も聞きます。もう率直に、申し訳ないなと思っています。 市川市民のおかげで、これだけ世界でも有名な動植物園になりました。だからこそ、『遠い存在になっちゃった』と言われるのがとても辛いんです」

帰路につく来園者に挨拶する安永課長=市川市動植物園公式Xより

いつの日か、必ず市川市民へ「恩返し」を

だからこそ、安永課長は一つの強い目標を胸に抱いています。それは、これまで40年間にわたり税金で市川市動植物園の運営を負担し、一番のファンでいてくれた市川市民への「恩返し」です。

安永課長:「市川市民に恩返しできる機会がほしいと思っています。それがどういう形になるかは市長が判断し、市議会などを通して決めていくことですが、個人的な見解としては、例えば『市民の方が一週間無料になる期間』を設定するとか、市民の方を『特別なツアー』にご招待するとか。浦安市さんも成人式をディズニーランドでやっていますが、いずれ恩返しをしたいと強く思っています」

世界中から注目されるようになった今でも、安永課長の視線は常に、足元で支え続けてくれた「市川市民」に向けられていました。

ライターコメント

これほどのブームの渦中にいながら、安永課長は「地元の人たちが気軽に来られなくなって辛い」と本気で心を痛めている姿が印象的でした。動植物園は命を学び、地域を繋ぐための公共の場。パンチくんが引き寄せたこの巨大なエネルギーは、いつか必ず、市川市民の皆さんのもとへ「最高の恩返し」として還元されるはずです。

<ライタープロフィル>ゆんち

2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。

現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。

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