千葉県にある市川市動植物園で注目を集める、サル山のニホンザル「パンチ」くん。6月30日から給餌方法が変更され、ご飯を食べる場所について「サル山」か「バックヤード」かは、パンチくん次第となりました。この変更についてネット上では様々な憶測とともに、「なぜやり方を変えたの」「飼育員さんに甘えさせてあげて」と心配する声も。それについて、安永崇課長に質問をぶつけてみました。
拡散動画の信憑性に疑問あり?
給餌方法の変更と様々な憶測や意見について、安永課長は開口一番、このように語りました。
安永課長:「6 月30日に公式Xで発信した『バックヤード内か、サル山で食べるかはパンチ次第』という発信内容に何一つ間違いはありません。ただ、誠に申し訳ありませんが、バックヤード内でどのように給餌しているかについては、説明を始めるとバックヤード内の構造や設備など、防犯セキュリティ上に関わる部分まで触れてしまうことになります。それらは法律的にも職員や元職員が守るべき秘密だと思いますのでお話することはいたしません。これは管理長や飼育員も含めた園スタッフの総意です」
給餌の詳細について明らかにできないという安永課長。そうなると、SNSではパンチくんへの給餌について様々な噂が飛び交います。
安永課長:「バックヤードのことをお話しないと決めた以上、様々な意見や憶測が飛び交うのは仕方のないことだと覚悟していますし、批判も承知のうえです。ただし、撮影時期や角度など、飼育員はもちろん私の目から見ても信憑性に疑問符のつく画像や動画が拡散されていて、それらを根拠にして議論が交わされていることを目にするのは、大変残念に思います。そうした画像や動画に振り回されずに、園の飼育方針をお見守りいただけるとありがたいのですが」

しがみつきは「甘え」ではない?
以前の給餌では、パンチくんが飼育員にしがみつきながら外でご飯を食べる姿がよく見られました。サル山の観覧エリアからは、パンチくんが飼育員と接する姿を見ることができる唯一のタイミングでもあります。
そのため、サルたちがエサを食べる様子だけではなく「飼育員さんに甘えているパンチくんの姿」も見られるご飯タイムは、パンチくんファンにとっては特に人気のシーンだったのです。
ところが最近、パンチくんはバックヤードでご飯を食べることが増えたため、サル山で飼育員の体にしがみつきながら食べるシーンは減りました。ファンにとっては、「飼育員さんに甘えながら食べられないなんてかわいそう」などと映ってしまっているようです。

「認識に違いがあるのかも」
これについて、安永課長はサル山での飼育方針を次のように紹介しました。
安永課長:「多くのファンの皆さんと飼育員の認識に違いがあるかも知れません。『幼いパンチが飼育員に甘えたがっているのではないか』というご意見をよく耳にしますが、飼育員の認識は、特にここ最近、しがみつく一番の理由は甘えたいからではなく、安全に優先的にご飯が食べられるから、ということ。動物も人間と同じで、楽で安全な方を選ぶでしょう。しかし、もしあのままの状態が続けば、ほかのサルたちのように群れの中でご飯を食べることがいつまでもできなくなってしまう。それが私たちの考えです」
もちろんパンチくんには、飼育員を慕う気持ちもあるでしょうが、それ以上に「優先的にご飯が食べられる安全地帯」だったというわけです。このまま人間に依存して「楽な方法」を続けていては、いずれ群れの社会に馴染めなくなってしまう懸念もあります。
食事のタイミングはサルのトラブルも起きやすい
給餌変更の狙いは「トラブル回避」と「成功体験の蓄積」 。そこで次のステップとして導入されたのが、群れから少し離れたバックヤード内でご飯を食べられるという選択肢をパンチに与える、という方法です。
安永課長:「サル同士で最も喧嘩が起きやすいのは食事のタイミング。まだ立場の弱いパンチをいきなり群れの中で食事をさせればトラブルに巻き込まれる危険もあります。それを避けるためにバックヤードでも食事できるようにしてあげました。また、飼育員の肩越しにではなく『自分でご飯を食べられた』という成功体験の積み重ねも大切です。群れ入れに非常に大事な時期ですから、飼育員は常に『パンチファースト』で進めていますよ。私はプロである彼らの飼育方針を全面的に支持しています」
担当飼育員たちは、日々のパンチくんの成長具合や行動を細かく観察しながら方針を決めています。スムーズに1歩進む日もあれば、「今日はダメだな」と判断すれば無理をせず、10歩下がってまたゆっくりとアプローチをやり直すなど、パンチくんのペースに合わせた対応が取られているとのことでした。
パンチくんの成長の裏には、動物と真剣に向き合う飼育員と、飼育員の考えを尊重して守り抜く運営側の見事な連携プレーがありました。

■市川市動植物園:公式サイト
ライターコメント
パンチくんが、群れの中でたくましく生きていけるように…。今回の給餌方法の変更には、パンチくんの将来を真剣に考える飼育員さんたちの深い愛情が込められていたようです。SNSには様々な情報が氾濫していますが、一番近くで日々パンチくんと向き合っている現場のスタッフの皆さんを信頼し、成長を静かに応援していきたいと思います。
<ライタープロフィル>ゆんち
2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。
現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。
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