世界中から熱い視線が注がれている市川市動植物園のニホンザル、パンチくん。連日多くの人が来園するなか、園は2月25日、公式Xでサルの健康状態や飼育環境について発表しました。
そこには、予期せぬブームの影で、動物たちの命と向き合い続ける飼育現場の切実な声と、パンチくんを守り抜こうとする強い決意がつづられていました。
サルの脱毛について:研究と検証を続ける日々
まずは一部のサルに脱毛が見られることについて、心配の声が相次いで寄せられていることに回答。園は「まずはこの場をお借りしてお詫びいたします」としたうえで、「大きな要因は毛づくろいのし過ぎなどの癖によるものと考えています」と説明しました。
その上で、対策について以下のように述べています。
市川市動植物園公式Xより:「改善に向け2025年6月より3名のチーム体制で健康で健全なサル山群れ飼育を実現するためのアプローチと検証を繰り返してきました。しかし冬場の傾向としてサル達が暖を取るために集まるようになるとお互いの距離が近くなることによって目の前のサルの毛づくろいをする時間が増えた結果脱毛を止めることが出来ませんでした」
冬場の寒さをしのぐための〝サル団子〟が、皮肉にも脱毛の要因になってしまったようです。専門チームを組み、1年以上前から改善に向けて試行錯誤を続けているということです。

飼育施設について:見えない場所にも「安心」を
また、サル山の環境についても、動物たちの幸せ(動物福祉)を第一に考え、よりよい生活ができるような取り組みが行われているとしました。
市川市動植物園公式Xより:「展示場からは見えませんが、終日開放しているバックヤードは4部屋ありパンチも隠れ家として利用しています。また、環境エンリッチメントの一環として与えた大量の樹木はパンチを始め若いサルには非常に有効な遊具となっております」
私たちの目に見える場所だけでなく、パンチくんが一人で静かに過ごせるバックヤードも確保されているとのこと。そして「遊び」を通じて本能を刺激する工夫など、限られた環境下で最大限の知恵を絞っている様子が伝わってきました。
最優先は「パンチが群れの一員となること」
なぜ今、環境を大きく変えないのか。そこには、パンチくんの命を守るための、飼育員さんたちの冷静な判断がありました。
市川市動植物園公式Xより:「いかにより良い環境に近づけられるか、知恵を絞り改善を模索しています。しかしながら現在はパンチが群れに入るために頑張っている最中であり、サル山の環境を突然大きく変えることはサル達が興奮状態になり、パンチに対して攻撃する可能性も心配しております」
よかれと思った変化が、群れの秩序を乱す引き金にもなり得るようです。パンチくんが本当の意味で仲間として迎え入れられるその日まで、今はあえて『変えない』という選択が大切なのかもしれません。
市川市動植物園公式Xより:「当面の間、サル達の健康状態に関して可能な限りでアプローチを行いながら、まずはパンチが無事に群れの一員となるのを優先したいと考えています。そして様子をみながら、サル山のニホンザルたちに対しての環境改善等を進めていきたいと思います」
今は「変化」よりも「安定」を。パンチくんが本当の意味で新しい家族に迎え入れられるその日まで、園はあえて「静かに見守る」という道を選びました。
ライターコメント
市川市動植物園が寄せられる多くの声の一つひとつに真摯に耳を傾けていること、そしてそれ以上に「目の前の動物たちの命」を何よりも大切にしていることに深い感銘を受けました。「まずはパンチが無事に群れの一員となるのを優先したい」。この決断は、現場でサルたちと毎日向き合っているプロだからこそ下せる、重く、そして愛のある判断だと思いました。
<ライタープロフィル>ゆんち
2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。
現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。












