よこはま動物園ズーラシア(横浜市)は、2月8日に21歳で死亡したホッキョクグマの「ゴーゴ」の死因について、現時点で分かったことをまとめた第3報を発表しました。
麻酔中の死亡が投じた波紋
今回の事故は、ゴーゴを繁殖目的で「とくしま動物園」へ移送するための準備中に発生しました。巨体のホッキョクグマを安全に運ぶため、輸送箱に収容する際に「麻酔」が施されましたが、ゴーゴはその最中に突如、心停止に陥ったのです。
人気者だったゴーゴの突然の悲報、そして「麻酔」という人為的な処置が死に直結したことから、SNSなどでは「なぜこの年齢で移送が必要だったのか」「麻酔中の管理に問題はなかったのか」といった厳しい声や、原因究明を求める大きな議論が巻き起こりました。
これに対しズーラシア側は、第2報を発表後、解剖所見と麻酔に
プールで遊ぶ元気だったころのゴーゴ 提供:よこはま動物園ズーラシア
直接の死因は「麻酔関連死」
第3報によると、解剖の結果、肝臓の腫れや腹水が認められましたが、これらは直接の死因ではないと判断されました。心停止の直前まで不整脈などの前兆はなく、経過は非常に突発的なものだったようです。
第3報より:「臨床経過および解剖所見を踏まえると、本症例の死因は麻酔関連死が示唆されますが、どのようなメカニズムで死亡に至ったかについては特定することができません」

判明した「麻酔中の異変」と肺の虚脱
麻酔薬の投与量は体重に対して標準的であり、導入もスムーズでした。しかし、モニタリングの中で一つの懸念点が生じていました。血液中の酸素濃度を示す数値が70〜80%と低値を示していたことです。
ズーラシア側の考察では、この数値の低下に大型動物ならではの要因が関与した可能性を指摘しています。
第3報より:「大型動物では麻酔下での横臥位において自重により肺が圧迫され、圧迫性無気肺が生じることが知られています(中略)本症例における突発的心停止には自重による肺の虚脱に伴う肺シャントおよび低酸素血症が関与した可能性があると考えられます」
つまり、386kgという自身の重みで肺が潰れ、血液に十分な酸素が取り込めなくなったことが、心停止を引き起こした主要因である可能性が高いという見解です。

当日の蘇生措置と今後について
心停止が確認された直後、現場では人工呼吸器の作動、強心剤の投与、心臓マッサージ、さらにはAEDによる除細動も試みられましたが、自発心拍が戻ることはありませんでした。
また、同時におこなわれていた「採精(精子の採取)」についても言及がありましたが、今回の心停止を直接引き起こした可能性は低いと結論づけられています。
第3報より:「現在、病理組織検査を実施しており、引き続き死因の詳細の解明に向けた確認を進めております」
なお、ゴーゴの遺体については、所有権を持つ天王寺動物園(大阪市)へ返却する方向で調整が進められています。
ライターコメント
第3報を読み解くと、ズーラシア側が専門的な数値をあえて使いながら、当時の状況を包み隠さず説明しようとする姿勢が伝わってきます。大型動物の麻酔がいかにハイリスクであるか、そして「自身の重みで肺が圧迫される」という野生動物ならではの難しさ。「種の保存(繁殖)」と「個体の安全」という、動物園が常に抱える重い葛藤の中での事故。ゴーゴが命をかけて残したこのデータが、今後のホッキョクグマ飼育の安全性を高める一助となることを願ってやみません。
<ライタープロフィル>ゆんち
2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。
現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。












