最近はぬいぐるみを持っていないことも…市川市動植物園=(撮影:産経新聞)

サルにとって〝知らないサル〟は事件 パンチくんが威嚇されても「サル山」に居続ける、自立への物語

By - emogram編集部・ゆんち
アニマル

市川市動植物園(千葉県)のサル山で群れ入りを目指すパンチくん。最近、園を訪れるファンの間で「ある変化」が話題になっています。それは、パンチくんが肌身離さず持っていた、母親代わりのオランウータンのぬいぐるみを見かけない時間が増えたことです。その裏側には、パンチくんの努力と、飼育員たちによる計画が隠されているのです。

サルにとって「知らないサル」は事件

私たち人間から見ると、同じ種が集まるサル山は平和なコミュニティに見えるかもしれません。しかし、ニホンザルの群れにとって「知らないサルが1頭入ってくる」ということは、想像を絶する大事件です。

サルは仲間意識が強く、独自のルールがあります。たとえ子ザルであっても、群れの外から来た個体は「部外者」であり警戒の対象となります。 私たちが、よく知っている部屋に、ある日、突然知らない人が座っていたらギョッとするように、サルたちにとってもパンチくんの存在を受け入れるには、時間とステップが必要なのです。

サル山の一員になるために

以前、SNSでパンチくんがほかのサルから威嚇される動画が拡散され、心配する声が上がったことがありました。 しかし、そこで「かわいそうだから」と隔離してしまえば、パンチくんは一生、仲間の輪に入ることはできません。

2人の担当飼育員を中心に、スタッフたちは、パンチくんが「どのサルと相性が良いか」「どのタイミングなら受け入れられるか」を慎重に観察しているようです。 威嚇されることも、ときには放り投げられることも、すべては群れの一員として認められるための「対話」の一部。飼育員はそれを見極め、絶妙な距離で見守っています。

「ぬいぐるみが見えない」ことの本当の意味

最近、パンチくんがぬいぐるみを置いて過ごす時間が増えたこと。それは、パンチくんがぬいぐるみという「心の安全地帯」がなくても、サル山に自分の居場所を見つけ始めた証でもあります。

本来なら奇跡に近いと言われるほど難しい「人工哺育児からのサル山の群れ入り」。パンチくんが今、こうしてほかのサルたちと少しずつ馴染んできている姿は、パンチくんの生命力と、裏方である「チーム・サル山」の技術が結実した姿なのです。

今週末、市川市動植物園へパンチくんを見に行く方は、ぜひパンチくん1頭だけではなく、パンチくんを取り巻く「サル山全体の空気感」を感じてみてください。

ライターコメント

パンチくんがぬいぐるみをぎゅっと抱きしめている姿、本当にかわいいですよね。あの風景が見られなくなりつつあることは残念でもありますが、パンチくんの成長の証でもあります。以前、市川市動植物園の安永課長が「ぬいぐるみを手放したパンチをいつか見たい」とお話されていたのが印象的でしたが、それが現実になりつつあるようです。

<ライタープロフィル>ゆんち

2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。

現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。

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