ボスのトロロ(左)と、今年生まれた赤ちゃんの「ゲルダ」=写真提供:高尾山さる園・野草園

「本妻」の座を争う2頭のメスザルと優柔不断なボスザル…高尾山さる園は「深夜ドラマ」

By - emogram編集部・ゆんち
アニマル

東京都八王子市の「高尾山さる園・野草園」では、深夜ドラマさながらのドロドロとした人間関係ならぬ「サル関係」が進行しています。約90頭が暮らすサル山のトップに立つのは、昨年9月にボスになった「トロロ」。ところが、メスの中で最高順位(ナンバー2)となる「本妻」の座がまだ決まっていません。取材したところ、2頭のメスザル「レタス」と「ホッペ」による争いが静かに進行していました。

かつての本命、レタスちゃん

「以前はしょっちゅうレタスに毛づくろいをしていたトロロですが、最近はホッペを毛づくろいしている姿が多く見られます」

ホッペ(中央)の毛づくろいをする、レタス(左)とボスのトロロ(右)=写真提供:高尾山さる園・野草園

取材に応じた同園の副園長、堅木杏美さんは、そう明かします。サルの世界において、毛づくろいは単なる身だしなみのケアではなく、相手への好意や信頼を示す大切なコミュニケーションです。

かつてトロロが最も頻繁に毛づくろいをしていた相手は、クリっとした目が印象的なメスのサル、レタスでした。

少し前まではボス「トロロ」の一番のお気に入りで、本妻の最有力候補と見られていたレタス=写真提供:高尾山さる園・野草園

しかし、レタスがナンバー2として有力視されていたのは、今年春ごろ。それから2、3カ月がたち、状況は変わりつつあるといいます。

無表情でボスに取り入る新星「ホッペ」の台頭

堅木さん:「最近はちょっと変化があって、もう1頭の『ホッペ』の方に気持ちが向いているなと感じます」

トロロの視線の先には今、ホッペの姿があります。ホッペは切れ長な瞳が印象的ないわゆる「クールビューティー」。そしてこの変化は、毛づくろいの相手だけにとどまりません。

ここ最近になって、ボス「トロロ」の本妻の最有力候補になったホッペ=写真提供:高尾山さる園・野草園

堅木さん:「餌を食べるときは、本来は位(群れの中でのサルの順位)が上の順に食べるのですが、最近は、ナンバー2だと思われていたレタスがホッペに餌を譲るという行動が見られるようになってきました」

本来であれば、序列が上のサルから先に餌を口にします。そのため、これまではボスに気に入られていたレタスから食べるはずが、ホッペに譲っているというのです。

しかし、自分より優位だったはずのホッペに餌を譲ることになり、レタスも悔しくないのでしょうか。

堅木さん:「もしレタスちゃんがホッペちゃんに歯向かったりすると、ボスであるトロロに怒られてしまうんです。だから譲るんです」

優柔不断なボスと、決められない序列

興味深いのは、ボスであるトロロ自身が、まだこの関係にはっきりとした結論を出していないという点です。

堅木さん:「実はそこがまだはっきり決まっていないんです。トロロ自身が、ナンバー2を決めかねている状況のようです」

はっきりしないボスのトロロ。そのため本妻の座の争いは熾烈を極めている=写真提供:高尾山さる園・野草園

堅木さんによれば、ここ1カ月ほどでこの関係性が動き始めているとのこと。そして、事態はこの秋、大きな節目を迎えます。

堅木さん:「これから10月、11月頃になると『発情期』に入ります。その時期になると、さらに上下関係がはっきりしてくるのではないかと思います」

レタスは本命の座を守れるのか、それともホッペが新たな「本妻」として君臨するのか。その結果は、あと数カ月で見えてきそうです。

■高尾山さる園・野草園:公式サイト

ライターコメント

毛づくろいの相手が変わる、餌を黙って譲る。人間の言葉に置き換えれば、まさに「気持ちが冷めていく」「立場を悟って身を引く」としか言いようのない光景です。それでもまだ、トロロ自身は答えを出せずにいる。ボスという立場でありながら、迷い続けるその不器用さもまた、どこか人間くさく感じました。発情期を迎えるこの秋、高尾山のサル山で何が起きるのか、注目していきたいと思います。

<ライタープロフィル>ゆんち

2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。

現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。

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