市川市動植物園=(撮影:ゆんち)

なぜ怪我をしても治療しないのか 市川市動植物園が貫く「信じて待つ」という判断

By - emogram編集部・ゆんち
アニマル

「怪我をしているサルがいる。治療しなくて大丈夫?」。 パンチくん目当てに多くのファンが来園する市川市動植物園(千葉県)のサル山ですが、来園者から園に対し、パンチくん以外にもさまざまな疑問が投げかけられることがあるようです。先日も、ケガをした高齢のサルが話題になり、その対応が注目されていました。

「保護せず経過観察」と公式Xで配信

一般的には、怪我をしたサルを目にすれば、すぐにでも保護したり、治療してあげたほうが良いのでは…と考えてしまいます。しかし、捕獲する際のストレスや治療のための全身麻酔は、特に高齢のサルにとってはリスクにもなります。

市川市動植物園も、公式Xで「現時点では、個体に負担となり捕獲及び全身麻酔を伴う治療を選択せず、経過観察が適切と判断しました」と説明、あえて処置はしないと判断したようです。飼育員をはじめとしたスタッフが慎重に判断し、その後も忍耐強く群れからは出さず、サルたちの状況を確認していたようです。

その後、再度公式Xで「地面に腕をつけられるようになり、回復傾向です」との報告があり、多くのファンも胸をなでおろしたのではないでしょうか。

群れで暮らすサル

人工哺育から群れ入りを目指しているパンチくんも、飼育員は〝忍耐〟の連続だったと思います。母ザルの育児放棄により、生まれた直後から人工哺育で育ったパンチくん。少しずつ状況を見極めて群れ入りを開始すると、自分よりも遥かに大きなサルたちに威嚇され、ときには手荒に振り回されることもありました。その様子を、飼育員たちは柵の向こう側で、じっと観察していたのでしょう。

「今すぐ助けてあげたい」「隔離して安全な場所に戻したい」

そんな気持ちとの葛藤もあったと思いますが、スタッフ一同が辛抱強く見守り続けたのは、それがニホンザルの社会で生きていくために避けては通れない道だったからです。もしそこで人間が介入してしまえば、パンチくんはいつまで経っても「群れの仲間」として認められることはありません。

いつ何が起きるか分からない緊張感の中、隔離という「逃げ道」を作らず、サル山の社会に委ねる。

その「静かな戦い」は、いまも続いています。

ライターコメント

目に見えて、最近のパンチくんは群れの中でほかのサルと過ごす時間が増えてきました。母親代わりのぬいぐるみの登場も、最近ではすっかり減っています。もしかしたら、群れ入りまでもう少しなのかもしれません。そのときまで、引き続き静かに見守りたいと思います。

<ライタープロフィル>ゆんち

2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。

現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。

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