やんちゃなだけの若者から卒業し、群れの中でも存在感を増しているホタル=東京都八王子市の高尾山さる園・野草園(撮影:ゆんち)

後ろ盾なしの若手サルが見せた「マウンティング」 高尾山さる園「ホタル」の野望

By - emogram編集部・ゆんち
アニマル

東京都八王子市「高尾山さる園・野草園」。ボス「トロロ」をめぐる本妻争い、母・テントとの複雑な関係、そしてトロロを取り巻く多くの「彼女」たち。群れの中心には、いつもトロロの物語がありました。しかし今、その足元で、思いがけない下剋上の兆しが見え始めています。主役は、家系的にはこれといった後ろ盾を持たない一頭のオスザル、「ホタル」です。

やんちゃなトラブルメーカーだったはずが

同園の副園長・堅木杏美さんは、ホタルのこれまでの様子をこう振り返ります。

「この春ぐらいまでは、ボスから『面倒くさい奴だ、関わりたくない』というような態度を取られていました。やんちゃ盛りでトラブルメーカーだったんです」

堅木さんによれば、サルの群れの中での序列は、そのサルの母親の序列で決まることが多いといいます。このホタルは、特に上位の母から生まれたわけでもない「若手のいたずら者」。それが、この春までのホタルの評価でした。

群れの中でも存在感を増し、ボスの『右腕』的なポジションを狙っているのではと目される「ホタル」(タイヤの上)=東京都八王子市の高尾山さる園・野草園(撮影:ゆんち)

夏から始まったサル山での異変

ところが今年の夏、7月ごろから状況が変わり始めます。

堅木さん:「夏(7月ごろ)に入ってから、ホタルの順位が上がってきているような行動が見られるようになりました」

そして飼育員たちを驚かせたのが、ある「一線を越えた」行動でした。

堅木さん:「ときおり、ホタルがボスのトロロに乗っかって『俺の方が偉いんだぞ』とアピールしている姿、いわゆる『マウンティング』を見かけるようになったんです」

サルの世界には、相手のお尻に乗って上下関係を確認する「マウンティング」という行動があります。本来、ボスはナンバーワンの存在であり、誰かからマウンティングされることなど絶対にありえません。

それを、ほかでもないホタルがやってのけているというのです。ただし、これはボスの座そのものを狙っての行動ではなさそうです。

一線を越えた行動、その理由

普通であれば、厳しい制裁が下ってもおかしくない行為。しかし、ボスのトロロの反応は意外なものでした。

堅木さん:「ボスも『やめろよ』という感じで軽く払う程度で、そこまで本気で怒らなかったんです」

さらに興味深いことに、トロロの側からホタルへの態度にも変化が見えているといいます。

堅木さん:「トロロの方からホタルに対して、毛づくろいをしてあげている姿もたびたび見られるようになりました」

反逆とも取れる行動を見逃し、むしろ手をかけて気にかける。堅木さんは、そこにある可能性を見出しています。

堅木さん:「もしかしたら、ホタルがボスの『右腕』的なポジションを狙っているのかな、とも思えて、今後のホタルの行動がとても気になっています」

ボスのトロロを支える、一番近い存在になろうとしているホタル。その健気な野心もまた、見ていて応援したくなる理由の一つです。

やんちゃなだけの若者から卒業し、群れの中でも存在感を増しているホタル=東京都八王子市の高尾山さる園・野草園(撮影:ゆんち)

家系に頼らない、自力の道

実は、ホタルの母親は序列では決して上位にいません。血筋という後ろ盾を持たない、恵まれた出自ではないホタル。それでも自分の力で、序列を上げてきたことになります。

堅木さん:「珍しいですが無くはないと思います。オスでもメスでも、ボスに気に入られることで順位が上がっていく可能性は十分にあります」

家系ではなく、実力と存在感で這い上がる。ホタルの物語は、高尾山のサル山における、数少ない「下剋上」の実例なのかもしれません。

やんちゃなだけの若者から卒業し、群れの中でも存在感を増しているホタル=東京都八王子市の高尾山さる園・野草園(撮影:ゆんち)

■高尾山さる園・野草園:公式サイト

ライターコメント

みんなから煙たがれていたやんちゃな若者が、いつの間にか頂点に近い場所を狙い始めている。しかもその姿を、当のボス自身が黙って受け入れている。この不思議な信頼関係の行方が、今一番気になっています。血筋がすべてではない、というホタルの生き方に、少し勇気をもらった気がします。

<ライタープロフィル>ゆんち

2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。

現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。

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