群れ入れに挑戦しているニホンザルのパンチくん、ほかのサルたちと「ごはモ」=YouTube「市川市公式チャンネル」より

「悪いサルはいない」に込めた思い パンチくんの市川市動植物園、安永課長があえて書いた理由

By - emogram編集部・ゆんち
アニマル

群れ入れを目指して頑張っている、市川市動植物園(千葉県)のサル山のパンチくん。そんなパンチくんをめぐり、今年のお盆の時期には群れでパンチくんがケガをし、同園の公式Xに心配の声が殺到するという事態が起きました。その後、同園では数頭のサルを一時的に群れから隔離し、丁寧に説明しましたが、なぜこの対応に踏み切ったのか、そこにはどんな判断があったのか。市川市動植物園の安永崇課長に、当時の裏側を聞きました。

隔離したのは、群れ全体とその個体自身のケアのため

隔離という対応に踏み切るかどうか、同園ではどのように判断したのでしょうか。安永課長はこう振り返ります。

安永課長:「飼育上対応したことについて、個別的に細かいことまでお話することは控えます。ただし『パンチを攻撃した個体だから隔離した』というのは少し違うかなと。飼育員は常に群れ全体を見渡していて、いつもと様子がおかしい、ほかへの攻撃が目立つ個体がいれば、群れのためにもその個体のためにも、いったん群れから離して様子を見る対応をすることがあります」

攻撃的な行動が目立った個体自身にも、何か理由があるかもしれない。隔離は、その個体を落ち着かせ、様子を見るための時間でもあった、ということです。

■市川市動植物園公式Xより:「サル山対応①」の投稿

サル山でほかのサルと交流しているパンチくん=YouTube「市川市公式チャンネル」より

SNSに並んだ言葉への違和感

一方で、隔離が公表された際、ネット上ではパンチくんに対して攻撃的な行動を見せたサルを指して「悪いサル」といった強い言葉を使い、「ファンの声によって園が悪いサルを隔離した」という見方をする声がありました。安永課長は、これに違和感を覚えたそうです。

安永課長:「園としての考え方は一貫していてブレていません。そして飼育員やスタッフにとっては、パンチもほかのサルも一緒です。良い・悪いなど決してありません。『悪いサル』などと言われては飼育員も悲しむことを理解していただきたいです」

あえて「見える化」した理由

一連の投稿の中で、安永課長は「今回群れから離れた複数の個体は決して『悪いサル』などではありません」と記しました。それに対して多くのファンから理解を示す返信が寄せられましたが、安永課長はこうした反応を投稿前に予測しつつも、あえて「悪いサルはいない」という言葉を投稿に書き残したといいます。

安永課長:「『悪いサル』などいないことは、私が言わずとも多くの方が分かってくださっていると思いました。でも、パンチが人気のあまり、パンチだけを中心にしたものの見方、善悪二元論のような考え方になってしまう方もいる。それは違います。私たちはサル山全体を見て対応を決め、飼育を進めるということを、ちゃんと書き残して『見える化』しておこうと」

多くのファンにとっては当たり前のことでも、あえて園の考えを言葉にして示したい。それが、あの一文に込められた意図だったようです。

パンチくんと今年サル山で誕生した赤ちゃんのサルたち=市川市動植物園公式Xより

■市川市動植物園公式Xより:「サル山対応④」

ライターコメント

「悪いサルはいない」という一文に、こうした背景があったとは思いもよりませんでした。あの投稿を見返すと、また少し違った気持ちで読めそうです。

<ライタープロフィル>ゆんち

2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。

現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。

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