サル山の群れ入れを目指して奮闘するニホンザルのパンチくんで注目を集める、市川市動植物園(千葉県)。パンチくんが大きな話題になって以来、同園では、飼育担当者の視点から見たサル山やパンチくんの様子を発信してきました。ここでは、そうした発信のひとつを振り返ります。今回取り上げるのは、2026年5月1日に同園が公式サイトで発表した声明文です。
GWはパンチくん人気で賑わい、サル山はベビーラッシュに
今年のゴールデンウイークは、パンチくんを一目見ようと多くの人が市川市動植物園に押し寄せました。ちょうどこの時期、サル山では相次いでサルの赤ちゃんが誕生していました。
新しい命の誕生に沸く一方で、世界中から注目されるパンチくんを取り巻く環境にも、少しずつ変化が生まれていました。そんな中、同園は5月1日、1本の声明文を発表します。

「パンチを除く個体の紹介は、当面控えます」
市川市動植物園は声明文で、「この赤ちゃんサル2頭を含め、パンチを除く各個体を紹介することは当面の間控えさせていただきます」と発表しました。多くの人が気になっていたはずの赤ちゃんの名前についても、「本日の時点でまだ命名していません」と伝えています。
その理由について同園は、パンチくんが世界的な話題となって以降、周囲のサルたちの名前などについて、問い合わせが相次いでいることを挙げました。パンチくんへの応援が大きくなるほど、その周囲のサルたちに対しても、好意だけでなくネガティブな感情まで向けられてしまう…。
そうした状況を踏まえ、「平穏な環境をサル山に提供したい」という思いから、あえて個体名や個性を公表しないという選択をしたと説明しています。
正確でない情報への注意喚起も
声明文では、SNS上に出回る情報についても触れられています。同園は、「飼育員から直接聞き取ったとされる情報や関係者を名乗って語られる情報、また、AIによって作られた画像や動画など、それらの中には正確ではないものも多く含まれます」と指摘。
ファンの間で広がる情報の中には、確認が取れていないものも少なくないことへの注意を呼びかけました。

群れ入れを最優先に 「いずれ紹介できる日まで」
同園がこれまでも繰り返し伝えてきたのは、パンチくんが群れの仲間と交流し、一員になることを最優先に考えているということです。3月8日に複数の個体を群れから離した対応も、その一環だったと振り返られています。
もし個体名を公表すれば、「保護してほしい」「群れから離してほしい」といった声が殺到し、園の運営や飼育員の業務、ひいては飼育するすべての動物たちに影響が及びかねないという懸念も明かされました。
声明文の最後には、「パンチや当園を応援するため、より多くの情報を知りたいという多くの皆様のお気持ちは十分理解しており心から感謝を申し上げます」とした上で、「いずれパンチが大人になり、私たちがそれぞれの個性を紹介できるその日までお待ちいただければ幸いです」とつづられていました。
■市川市動植物園公式サイト:「【パンチ】これまでの声明文」
ライターコメント
世界中から注がれる愛情の大きさゆえに、かえって周囲のサルたちを守らなければならなくなるというのは、何とも複雑な状況だと思います。それでも「平穏な環境を」という言葉を選び、あえて多くを語らないという決断をした同園の姿勢には、パンチくんだけでなく、サル山で暮らすすべての個体への愛情と責任感がにじんでいるように感じました。
<ライタープロフィル>ゆんち
2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。
現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。
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