日本を代表する温泉地として知られる、群馬県の草津温泉。湯煙が立ちのぼるこの街に、日本でも有数の〝熱~い〟動物園があります。私営の「草津熱帯圏」です。今、この園で暮らす2頭の若いニホンザル、モン吉とモン次が改めて注目されています。
ボス交代の嵐の中で生まれた命
モン吉が生まれたのは今から約3年前、2023年5月のこと。当時、草津熱帯圏のサル山は、絶対的な存在だったボスが交代するという激動の時期を迎えていました。園長の今井敏夫さんによると、サルの社会において、ボスの交代は群れ全体を不安定にさせるといいます。
そんな殺伐とした空気の中、モン吉は誕生しましたが、生まれたときに近くに母ザルはいませんでした。地面に落ちているモン吉を、飼育員が発見して保護したのです。直後に別の母ザルから生まれたモン次もまた、同じ運命を辿りました。

2頭の赤ちゃんザルは、飼育員の「人工哺育」によって育てられました。そして、モン吉の母親代わりになったのは「ぬいぐるみ」だったそうです。モン吉は、そのぬいぐるみに必死にしがみつきながら、すくすくと成長しました。
「群れ」という壁に阻まれて
飼育員によって育てられた2頭ですが、その後「群れ入り」を目指した奮闘が始まりました。最初は少しずつ群れにもなじんでいましたが、今井園長によると「タイミングが最悪だった」とのこと。ボスの座を巡って荒れる群れの中で、人工哺育で育った「よそ者」への風当たりは想像を絶するものでした。
大きなサルたちからの激しい拒否。モン吉は、どれほど頑張ってもその壁を越えることができませんでした。草津熱帯圏は、2頭を無理に群れへ戻すのではなく、別の部屋で生きていく「第三の道」を選びました。

現在、もうすぐ3歳を迎えるモン吉とモン次は、大きなサル山を離れ、2頭で寄り添って暮らしています。大きな群れの中で揉まれる強さはなくても、2頭で分け合うぬくもりがありました。
「触れ合い」が繋ぐ、命の体温
〝年季の入った建物〟で知られる草津熱帯圏ですが、今、新しい活気に満ちています。2年前の夏にオープンした「ふれあい館」では、カピバラやリスザルなど、ほかの園ではなかなか触れることのできない動物と、とても近い距離で触れ合うことができます。
「バブルの後の立て直しに苦労しましたが、ふれあい館の成功でお客さんが戻ってきました。みなさん『こんなに楽しい動物園は初めてです』と言ってくださいます。ぜひ遊びにきてください」と今井園長は話していました。
「建物は古びているけれど、命との距離はどこよりも近い」。そんな園の姿勢が、モン吉たちの育て方にも通じているように感じました。
■草津熱帯圏
http://nettaiken.com/
■草津熱帯圏チャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCe60E_bV1VuPfGgxfbtJdAw
ライターコメント
草津の湯畑のそばにある「草津熱帯圏」、温泉のついでに立ち寄ったという人も多いのではないでしょうか。大型ドームを始め、各施設は年季が入っているのですが、とにかく動物との距離感が近くて本当に楽しいところです。私も子供を連れて何度か行きましたが、「ふれあい館」はまだ行ったことがなく、早く再訪したいと思っている施設の1つです。
<ライタープロフィル>ゆんち
2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。
現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。






