約4万円で違法に取引され、小さな遊園地で「見せもの」として展示されていたところを保護されたマレーグマの子「ルマク」。emogramでもその痛ましいニュースを伝えてきましたが、その後の状況から、ルマクが背負わされた「過酷な未来」が見えてきました。人の欲望の犠牲になったルマクは、もう二度と森には帰れない可能性が高いそうです。
「コタ・ブルー」の遊園地でペットから展示物へ
ルマクが保護されたのは、ボルネオ島マレーシア・サバ州にある「コタ・ブルー」という地区の小さな遊園地。ボルネオマレーグマ保護センター(BSBCC)ジャパンの須崎さんによると、ルマクはもともと、遊園地の関係者によって「ペット」として飼育されていたそうです。
しかし、クマは成長すれば当然大きくなり、素人が飼い続けることは困難になります。その結果、大きくなったルマクは遊園地で「展示」されることになったのです。
母グマの行方はわかりませんが、ルマクを密猟する際に殺された可能性が高いといいます。その後、ルマクは売り飛ばされ、人間の娯楽として消費されました。しかし、ルマクから奪われたものは、自由だけではありませんでした。
「人慣れ」の残酷な代償。野生復帰はほぼ不可能
保護された際、ルマクは「とても人慣れしている」と報告されていました。一見するとかわいらしく、安心する言葉のように思えますが、実はこれこそが、ルマクに突きつけられた最も残酷な現実でした。
須崎さん:「野生に戻すのは極めて難しいと考えられます」
ルマクは生後間もないころから約1歳まで人間に飼育されていたため、自然の森を経験しておらず、野生の森で生きていくことは難しいといいます。もし今後、再び森に返したとしても、人慣れしているルマクは自ら人里へ近づいてしまい、再び捕獲されたり、密猟されたりする危険があるのです。
人間の勝手な「ペットにしたい」という欲望が、ルマクから「野生のクマとして森で生きる未来」を永遠に奪ってしまいました。

センターでの「終生飼育」、そして私たちにできること
BSBCCは、ルマクが野生に近い環境の中で、心身ともに健康に過ごせるよう「終生飼育」をしていく方針を考えています。ルマクはこれから一生、センターのスタッフたちの愛情を受けながら生きていきます。
遠いボルネオ島の出来事に、日本にいる私たちができることはないのでしょうか。実は、海を越えた日本からでも、毎日の暮らしの中でできるアクションがたくさんあります。
例えば、日々の買い物を通じた支援です。ボルネオ島で伐採された木材や、そこで生産されるパーム油は、私たちの住む日本にも数多く輸出されています。だからこそ、環境や人権に配慮して生産されたことを示す「FSC認証」や「RSPO認証」のマークがついた商品を選ぶことが、マレーグマたちが暮らす現地の豊かな森を守ることに直結するのです。
また、ボルネオマレーグマ保護センタージャパンが販売しているオリジナルグッズを購入したり、少額から参加できる寄付を行ったりすることも、ルマクたちを直接支える大きな力になります。さらに、現地を訪れたいという方に向けて、毎年6月ごろには「マレーグマに会いに行こう!ツアー」も開催されています。本年(5月31日〜6月4日)のツアーはすでに満員とのことですが、2027年も同時期に開催が予定されているそうです。
決して遠い国の話ではありません。まずはルマクの物語を知り、野生動物をペットにすることの罪深さを周りに伝えていくこと。そして、私たちの日常の選択を少しだけ変えてみること。それらはすべて、マレーグマの命と環境を守る立派な保護活動の一歩なのです。
■ボルネオマレーグマ保護センタージャパン
https://www.bsbccjapan.org/
ライターコメント
「人慣れしているから、もう野生には帰れない」。この言葉を聞いて胸が締め付けられました。本来ならお母さんグマと一緒に森を駆け回り、木登りをし、木の実を探していたはずのルマク。その未来を奪ったのは私たち人間です。ルマクは今、BSBCCという安心できる「居場所」を見つけました。遠いボルネオの森で暮らすマレーグマと保護活動を続けるスタッフのみなさんに、日本からエールを送り続けたいと思います。
<ライタープロフィル>ゆんち
2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。
現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。






