選び抜いた渾身の一粒、「みおしずく」全国へ
滋賀県では初となるオリジナルのイチゴ品種「みおしずく」。
今月から本格的な販売が始まりました。
2016年の育成スタートから8年。
10月には正式に品種登録され、全国デビューへ向けて動き出しています。

滋賀県、イチゴで勝負に
「滋賀県には、県オリジナルの品種があまりなくて…」
そう話すのは、滋賀県みらいの農業振興課食のブランド推進室で室長補佐を務める中井洋子さん。
滋賀県では近年、新規就農者を中心にイチゴ栽培が増加していました。
県内の園芸品目の中でも、子供から大人まで食べやすい「イチゴ」をブランド化して多くの皆さんに食べてもらいたい――それが農家さんたちの長年の願いだったそうです。
「『みおしずく』は滋賀県にとって待望のオリジナルブランドなんです」と中井さん。
全国的には、各地でオリジナルイチゴ品種のブランド化が盛んになっており、福岡の「あまおう」、栃木の「スカイベリー」などの人気を受け、滋賀県も2016年、品種開発に乗り出しました。

「章姫」「かおり野」から誕生
「みおしずく」は、滋賀県内で多く栽培され収量も安定している「章姫(あきひめ)」を父親に、適度な酸味で強い香りを持つ「かおり野」を母親としています。「章姫」の良さを受け継ぎつつ、「かおり野」の特徴である香りの良さも併せ持つ品種になっています。
こうして誕生した新品種、2021年に名前を公募すると、約7600件もの応募が集まったそうです。その中から、「みおしずく」という名前が選ばれました。
中井さんは、「試験販売からスタートし、今年で4年目の出荷。県民の思いが込められた『みおしずく』を、一人でも多くの方に召し上がってほしい」と話しています。
香りは他品種の10倍
「みおしずく」の最大の特徴は、その香りです。県が12月1日に公表した分析結果によると、「あまおう」や「章姫」など他の人気品種と比べ、花のような芳醇な香りが約10倍も強いことが判明しました。

ほかにも、適度な酸味と際立つさわやかな甘み、大粒で明るい赤色の美しい見た目が特徴です。収穫期は12月~5月頃まで。章姫と同等の収量を確保しながら、果実が傷つきにくく、出荷時期も早いというメリットがあります。
4年で栽培面積33倍、東京進出も
試験栽培が始まった2022年度、栽培面積はわずか0.13ヘクタール、市場出荷量は10トンでした。それが今年度(2025年度)には、栽培面積4.4ヘクタール、市場出荷量45トンに増える見通しです。わずか4年で栽培面積が33倍以上に拡大したことになります。
今シーズンは、県内の大手スーパー「平和堂」など主要量販店をはじめ、一部県外の店舗でも販売されます。そして注目は、首都圏での本格的なPR展開です。
12月19日には東京・豊洲市場の「東京シティ青果」で仲卸約200社向けのPRイベントを実施。さらに来年2月6~8日には、東京・新宿の老舗高級フルーツ店「新宿高野」でフェアを開催し、みおしずくやスイーツの販売を予定しています。
「首都圏の方にも滋賀のイチゴを知っていただけるととてもうれしいです」と、中井さんは嬉しそうに話していました。
ライターコメント
滋賀県の農産物は直売などが多く、全国への流通を促す市場への出荷は少なかったこともあり、ブランド化が進んでいなかったそうです。「みおしずく」は、その状況を変える突破口となるかもしれません。8年かけて丁寧に育て上げられた滋賀県初のオリジナルイチゴが、今、全国へと羽ばたこうとしています。












