現在、空前の注目を集めている市川市動植物園の「パンチくん」。生まれたときから世話をし、群れへの合流を目指して支えているのが、人工哺育を担当した二人の飼育員です。
SNSでも二人の献身的な姿に称賛が集まっていますが、一方で、市川市動植物園の安永崇課長はある「懸念」を募らせています。それは、飼育員個人への過度な注目や接触です。

「一緒に写真を撮って」と頼まれたり…
安永課長によると、二人の飼育員はサルたちの状態を観察するため、観覧通路側(一般の来園者がいるサイド)に出る機会があります。しかし、そこで本来の業務に支障が出るような事態も起きているといいます。
安永課長: 「通路側に出ると、非常に多くの方に声をかけていただくようになりました。一緒に写真を撮ってくださいと頼まれたり、質問責めにあったり…。そうした場面が多くなっていることを、私としても非常に気にしています」
パンチくんのファンからの温かい声掛けであることは理解しつつも、それが「個人」への執着や、行き過ぎた行動に発展しかねないリスクを、安永課長は感じているようです。
長期化した場合の不安
現在は、担当する二人のスタッフも使命感を持って前向きに業務にあたっているとのこと。しかし、パンチくんの成長とともにこのブームが長期化した場合が不安だと話します。
安永課長:「今はまだ二人とも元気にやっていますが、長期間重なってくると、少なからず本人たちの負担になり、本来の飼育業務に支障が出てしまうだろうと思っています。園として今一番心配していることの一つです」
飼育員はあくまで生き物の命を預かる専門職であり、タレントではありません。安永課長の言葉からは、部下のプライバシーと心身の健康を守ろうとする意志が感じられました。

パンチくんを守ることは、飼育員を守ること
私たちがパンチくんの愛らしい姿を安心して見ていられるのは、飼育員が日々、忙しいルーティンをこなし細心の注意を払って飼育を行っているからこそ。
現場で飼育員さんを見かけた際、熱心に質問をしたくなる気持ちは分かります。しかし、飼育員やスタッフのみなさんが重要な任務に集中できるよう、そっと見守るのも大切です。それこそが、パンチくんを愛するファンに求められる「本当の応援」なのかもしれません。
■市川市動植物園 公式Xアカウント
市川市動植物園(公式)(@ichikawa_zoo)
ライターコメント
パンチくんに心を寄せるあまり、その成長を支える飼育員さんに対しても、一ファンとしてつい過剰な期待や親密さを求めてしまいがちです。しかし、飼育員さんの最も大切な任務は、動物たちの平穏な日常を守ること。そのためには、私たち来場者が飼育員さんの業務の妨げにならないよう、節度を持って見守ることが不可欠だと感じました。
<ライタープロフィル>ゆんち
2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。
現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。












