7月7日～7月13日|AB型は好き好き大好き超愛してる、電話なんかやめてさあ位の勢い|今週の血液型×ととのいタロットで運勢占い

『好き好き大好き超愛してる』

勢いのありすぎるこのタイトル、なんと芥川龍之介賞の第131回（2004年上半期）候補作です。

当時、都知事だった、審査員の石原慎太郎さんからは、「タイトルを見ただけでうんざりした」と評されるほどの、これってアリなの?という、ド直球な口語体。（ほかの審査員の池澤夏樹さん、山田詠美さんあたりは推していました!)

それでも、そのスピード感のあるごくごく私的な語りと、それなのに抽象的な構造やミステリーを両立し、そして作品ごとに変わる文体や語り手の自意識を描く作風で、長年ファンを抱えている舞城王太郎さんは、なんと覆面作家。

男か女かもわかりません。公開情報は、1973年生まれ、福井県出身ということのみ。
2003年には、『阿修羅ガール』で第16回三島由紀夫賞を受賞するも、授賞式にはまさかの欠席。
同賞の受賞者で式典に欠席したのは舞城王太郎がはじめてだったといい、当時は話題になりました。

作品内の登場人物のキャラの強さや、語りの切実さ、と相反するような透明性。

筆者より遥かに文学知識や芸術知識が豊富で、メールでの文章が上手くて、文字や通話のやりとりはするけれども会ったことのない占い師に、やたら舞城王太郎みたいなことばかりを話す先生がいます。

先生は、タロットはもちろん、坪内逍遥のこともベケットのことなど何でも詳しくて、一時、よくサルトルとカミュごっこの会話を楽しんでいました。

あるとき、冗談で、「先生、ひょっとして舞城王太郎なんじゃないですか?わたし舞城大好きなんで、正体をあらわすか、シャーマン的におろしてくださいよ」というと、「舞城王太郎ってまだ生きてません?生きてる人はおろせませんよ」と笑い出しました。

でも、筆者は食い下がりました。

私「なんで生きてるってわかるんですか?舞城って、ファンにとっては、男か女かもわからない、公式情報が合っているのかも分からない、最近は寡作だし、どこにいるのか、生きてるのかもわからない、そんな存在なんです。生きてるってことは、先生が舞城王太郎なんじゃないですか?」

先生「…」

私「先生って、普段、占いは、タロットだけですかね?あんまり、シャーマン的に、人の気持ちおろしたりしませんか?」

先生「占いはできません。あなたと話してるだけですよ」

私「えっ…それって、相談者の頭の中に入り込んで、一心同体になって占うみたいなことですか?」

先生「小説家だから。占いできません」

私「えっ…」

先生「舞城王太郎について聞きたいことはなんでもどうぞ」

それから、その占い師さんは、筆者の舞城王太郎に関する質問に対し全て答えてくれました。

覆面作家の詩人で、舞城ファンであることを公言している「最果タヒさんについてはどうですか?」と筆者が聞くと、言葉に詰まりながら、他の作家の話をされてちょっとイラっとしているようで、余計、舞城王太郎っぽいかしらと思いました。

だから、この占い師さんが舞城王太郎な気がして、一時、何度も、そうではないかと自らタロットカードを引いてみたり、たくさんの同業者に、その話を占ってもらったりしていました。

それにより、だんだん真相に近づきつつあります。

まるで、いろんな探偵が結集して、たったひとつの真実にたどり着こうとしている、占い師総結集版みたいな感じです。

詳細はまたの機会に、というところですが…。

既に、あなた自身も、これが本当にあった実話か、筆者の創作であるか、分からないのではないでしょうか?

それでも、誰が言ったか分からない、本当かどうか分からない、そんな語りそのものに宿る自由と、真実味があります。

例えば一部の役者さんがそうであるように、自分を忘れるからこそ表現できること、演じられること、伝えられること、語られることがあり、一部の占い師もまた、相談者を占うときに、いち人間としての、個人情報や自我を消すことで霊感を高めて、鑑定の精度を高める者もいます。

「最大の幸福が空から皆に降り注ぐといい。」まさにそんな祈りを描いている【ワンドの8】の絵柄。
手紙を示すこともある【ワンドの8】は、匿名的な語りの躍動そのもの。

イエス・キリストの語りが語られた聖書を通じて、イエス・キリストの姿を探してしまう。

ブッダの説法が語られたお経を、通じて、ブッダの姿を見つけたくなる。

プラトンやアリストテレスが文字で継承した、書かなかったソクラテスの哲学を通じて、彼を理解したくなる。

顔を隠して詠われる透明な言語装置に、読者たちは想像力を塗り込められ、最果タヒを信じたくなる。

毎回覆面をかぶりなおすような、変幻自在な語りを通じて、舞城王太郎に恋をしてしまう。

姿を見せあわないからこそ、そこに生まれる語りの無責任かつ自由な勢いに、人々は愛を感じて、時に信じてしまう。

『好き好き大好き超愛してる』は、覆面作家、舞城王太郎が描く、「今はもういない、柿緒」への、過去の不在の空白を想像し続ける語りであり、そんな過剰な語りこそが、祈りであり、愛なのだと。

「愛は祈りだ。祈りはときに物語になる」と、作中で繰り返しながら、以下の文章で締めくくられています。

「パスカルは言った。愛し過ぎていないなら、充分に愛していないのだ。僕は一人で小説を書いている。女の子をふったりもする。バカだなと思う。でもバカでいい。間違いばかりでいい。愛しすぎるというのはそういうことなのだ。そしてそれぐらいで、人を愛するにはちょうどなのだ。」

今週も、あなたの気持ちが整う生活を応援しています♪

それでは、また来週！