温泉民宿 南部屋(なんぶや)公式Xより

宿の裏庭に「特別天然記念物」が3日連続出没、青森の温泉民宿が一躍話題に

By - emogram編集部
ローカル

雪深い青森県十和田市。八甲田山の麓、奥入瀬渓流の外れに位置する「温泉民宿 南部屋(なんぶや)」では、この冬、少し変わった〝常連客〟が話題を呼んでいます。

それは、一頭の野生のニホンカモシカです。南部屋の公式X(@nanbuya_towada)の投稿には、特別天然記念物のカモシカの写真とともに、「かれこれもう3日連続……。 ただただ刺激せず見守ります」と書かれていました。

温泉民宿 南部屋(なんぶや)公式Xより

宿の裏庭に出没しては、静かに時を過ごすその姿に、SNSでは「神々しい」「癒やされる」と多くの反響が寄せられています。

さいたま市から移住し、この宿を切り盛りする宿主の田村暁(さとる)さんに、カモシカとの日々の暮らしについて詳しくお話を伺いました。

「冬の餌場」に選ばれたイチイの木

田村さんによれば、南部屋の周辺は、カモシカをはじめ、キツネやタヌキ、ウサギ、リス、時にはクマも姿を見せるという、豊かな自然に囲まれた地域です。

田村さん:「近所の散策時にカモシカに出くわすこと自体はあまり珍しくありません。飼い犬の日々の散歩をしていると、季節に関係なく毎月くらいのペースで出くわしますし、カモシカの縄張りの巡回コースに重なったりすれば、毎週、あるいは連日出くわすこともたまにあります」

例年、雪深い冬になると山の食料が極端に少なくなるため、野生動物たちが標高の低い人里周辺に降りてくる傾向があるといいます。

田村さん:「今回のカモシカさんの出没も特段珍しくはないのですが、この子はここ数日ずっと当館周辺に通っています。今年はウチの裏のイチイの木が、このカモシカさんの冬の餌場に選ばれたんだなぁ…と考えています」

厳しい冬の寒さのなか、田村さんはその姿を見守りながら「無事に皆で頑張って、この厳しい冬を乗り越えようね」と静かにエールを送っているそうです。

「慎重だけど好奇心旺盛」な隣人

カモシカは、野生動物でありながら、独特の距離感を持つ生き物です。田村さんによると、普段から野生のカモシカには「慎重だけど一方で好奇心旺盛」な面があるのだそうです。

田村さん:「山で遭遇してもすぐに逃げ去ってしまうわけではなく、一定の距離を保って遠くからこちらを観察していることが多いんです。このカモシカさんも、我々が外に出ていると、警戒しつつこちらのことを観察もしつつ、食事もしつつ…といった感じで、特に怖がるような感じはありません」

とはいえ、そこは野生の力。餌場が裏口のすぐ脇にあるため、予期せずバッタリと至近距離で鉢合わせてしまうこともあるといいます。

田村さん:「あまりにお互いが接近しすぎてしまうと、縄張り(餌場)を主張するために、頭を下げてツノを見せる、前脚を踏み鳴らすといった威嚇行動を取ることもあります。ですので、なるべく裏口を使わないようにしたり、常にカモシカさんと一定の距離(最低限10m)を取りながら、刺激をしないように生活しつつ見守っています」

お互いのテリトリーを尊重しながら、同じ屋根の下(庭先)で冬を過ごす。そこには、移住者である田村さんが築き上げた、自然との心地よい共生の形があるようです。

こぢんまりした宿ならではの温かさ

大きな旅館とはまた違う、「温泉民宿」だからこその温かさと、八甲田の自然。 田村さんのカモシカに向ける優しい眼差しに、南部屋を訪れた人が「温かなおもてなしを受けた」と称賛する理由があるように思いました。

温泉民宿 南部屋(なんぶや)公式Xより

■温泉民宿 南部屋
https://nanbuyatowada.wixsite.com/nanbuya

ライターコメント

田村さんのお話を伺って、カモシカを「珍客」として騒ぐのではなく、「同じ冬を乗り越える仲間」として受け入れている姿勢に深く感動しました。「今年はウチの木が餌場に選ばれたんだな」という言葉の端々に、八甲田の懐に抱かれて生きる人の強さと優しさを感じます。厳しい自然の中、そう遠くない春の訪れまで、カモシカと宿主の静かな共同生活が少しでも続けばと祈るばかりです。

<ライタープロフィル>ゆんち

2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。

現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。

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