フィリピン映画 『#アバウトアス・バット・ノット・アバウトアス』が、 2026年1月17日からシアター・イメージフォーラム(東京・渋谷)ほかにて全国で順次公開されています。

劇場公開を記念して、初日の1月17日には、矢田部吉彦さん(前東京国際映画祭ディレクター)と児玉美月さん(映画批評家)、翌1月18日には、ヤマクニキョウコさん(フィリピン映画研究者)と辛酸なめ子さん(漫画家、コラムニスト)、そして1月24日には入内島美穂さん(アジアンクィア映画祭共同代表)をゲストにトークイベントが開催されました。
「あさイチ」でも紹介
また、1月28日のNHKの「あさイチ」では 「伊藤さとりさんの推し映画」というコーナーの中でも紹介され、「俳優やってる人はぜひ観た方がいい。シチュエーションもので教授と学生が話す心理サスペンスなんですが、とにかく脚本が素晴らしい!」と絶賛されるなど、各方面で話題を集めてます。
脚本・監督のジュン・ロブレス・ラナ氏は、これまで『ダイ・ビューティフル』(2016年)で東京国際映画祭の観客賞と最優秀男優賞の2冠を制し、新作『アバウトアス・バット・ノット・アバウトアス』については発表後、国内外の映画祭で高い評価を受け、フィリピンではすでに舞台化も決定しています。
近年、注目を集めるフィリピン映画
配給会社サムワンズガーデンの津留崎麻子さんによると、ここ数年、興行収入や制作本数においてアジア映画界の中でもインド映画に続く黄金期を迎えているというフィリピン映画。そのアート性や多彩な世界観で海外の映画祭から大きな注目を集めているそうです。
そんな、フィリピン映画界の《脚本の魔術師》と2人の演者が生み出したフィリピン発都会派新感覚ミニマル室内劇とされる本作は、一体、どのような内容なのでしょうか?
辛酸なめ子さんによる見どころ漫画

本作は、1卓のテーブルのみという超ミニマルなセットを舞台にしながらも、映画ならではのカメラワークの切り替えや、2人の会話の緊迫感や変化で飽きさせない、ワンシチュエーション・ノンストップで繰り広げられる90分間の会話劇です。
大ヒットドラマ『ゲームボーイズ』で日本でも人気を博した若手演技派イライジャ・カンラスさんが小悪魔な美青年、フィリピンのベテラン俳優ロムニック・サルメンタさんが傷心の教授を演じました。
今回、辛酸さんが本作のために書き下ろした漫画を見るだけでも、なんだか内容が気になってきますよね!
ストーリー
孤独な文学教授と若き作家志望の青年が、亡き恋人の秘密を巡って繰り広げる、90分間のワンシチュエーション会話劇。「死」をトリガーに「生」と「性」に鋭くメスを入れ、現代フィリピンの病巣と愛憎が描かれる。
大ヒットドラマ『ゲームボーイズ』で日本でも人気を博した若手演技派イライジャさんが小悪魔な美青年を、フィリピンのベテラン俳優ロムニックさんが傷心の教授を演じた。1卓のテーブルのみという超ミニマルなセットを舞台に、目に見えないものも描き出す二人の洒脱な会話劇が繰り広げられる。
辛酸なめ子さんとヤマクニキョウコさんのアフタートーク

今回、筆者は、公開された映画を観賞するとともに、1月18日に東京都内で行われた、辛酸なめ子さんとフィリピン映画研究のヤマクニキョウコさんのアフタートークも取材してきました。
辛酸さんの、映画で印象に残った見どころがユニークな表現で語られるとともに、ヤマクニさんは、研究者ならではの視点で、俳優陣や制作陣のこれまでの活躍やバックグラウンド、またフィリピン映画で主流となっている演技法などについての見識を惜しみなく披露してくれました。
その場で「役者さんにセリフを考えさせる」指導法
フィリピン映画では、その場で「役者さんにセリフを考えさせる」という演技指導がメジャーなのだとか。そうした話を伺うと、本作で描かれた同じ卓上を挟んでの90分間飽きさせない緊迫感とリアリティのある演技について、フィリピンならではの指導法で養われた表現力なんだと改めて合点がいきました。
トークショーでは、映画に登場する老舗レストランがある都会的なエリアーーBGC(ボニファシオ・グローバル・シティ)のことにも話が及び、辛酸さんが「天王洲アイルみたいなところですか?」と聞くと、ヤマクニさんが「東京のことわからへん!大阪の人、います?茶屋町みたいなところ!」といい、わかる人もわからない人も、その地元感が伝わってきて、会場から笑いが起こる一幕もありました。
確かに、天王洲アイルも茶屋町もそれぞれお洒落で、それぞれ東京都民と大阪府民には馴染み深いですが、エリア外の人からはあまり知られていないのも、共通していますよね!

そして、今回登壇した、数多くのフィリピン映画を観てきたヤマクニさんから独自にコメントをいただきました。今回の映画については「とにかく映画が巧い!その技巧に思わず唸らされる一作です」とコメント。
さらに、「本作はあらためてこちらの想像をはるかに超えてきた」ものだったといい、「制限を楽しんでいるかのような、2人だけの芝居に、これほど心を掴まれるとは!純粋に映画として面白い一本ですが、あえて言いたい!やっぱり、すごいぞ!フィリピン映画!」と絶賛されていました。
なるほど!映画を観賞した筆者も納得のヤマクニさんの解説でした。
フィリピン映画の今が体感できる本作。ぜひ、映画館に観に行ってくださいね!
次回の後編では、本作における立役者たちを直撃!
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世界が注目するクリエイティビティ: 英語版ロゴやフィリピン版ポスターを手掛けたジャスティン・ベサナ氏への独占インタビュー。メインビジュアルの意図について聞きました。
- 制作秘話:LGBTQ+当事者でもある、ジュン・ロブレス・ラナ監督。矢田部吉彦さん(前東京国際映画祭ディレクター)の事前対談から、コロナ禍での制限的な制作や、個人的な気持ちの投影について、一部抜粋。
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熱狂の渦: SNSでの反響や各界著名人からのコメントも一挙公開!
- 配給の舞台裏: サムワンズガーデン津留崎氏が語る、今だから明かせる制作・配給秘話。
ここでしか読めない「作品の裏側」をたっぷりとお届けします。お楽しみに!


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【トークイベント内容詳細】
ライターコメント
実際に鑑賞して、本当に、表現や思想含めて、最先端の面白さを感じる作品でした。
舞台的な設定ながら、映画ならではのカメラワークや表現力が、ふんだんにちりばめられています!
映画の冒頭では、車の中で、アラフィフの文学教授のエリックが、目の下のしわやクマに化粧を施して隠そうとする、印象的なシーンが描かれます。
その後、大都会マニラの老舗レストランで待ち合わせていたのは、若き作家志望の大学生・ランス。
フィリピン随一の名門大学のエリート同士のお互いの立場から繰り広げる、一見プラトニックに見え、時にはダフトパンクなどのカルチャーの話で盛り上がりながらも、どこか訳ありな会話と関係性。
どうやら、優秀な苦学生ランスは、陰のある生い立ちながら、時には際どいやりかたで、お金を工面していました。さらには文学教授エリックに、住む場所の手配であったり、君はアップルパイが好きだからと毎朝もってきて一緒に食べるなど、「プラトニックな援助」をしてもらっていたようなのです。
そこへ亡くなったはずの、エリックの恋人であり著名な作家マルコスの記憶が去来します。残された未発表の作品に関する秘密を巡って、純粋でエリックを慕っていたはずの青年ランスの、小説家志望としてなりあがろうとするかけひきが見え隠れしてきます。
なんと、その「第三者」ともいえる、三角関係が描かれる有名作家マルコスすら、エリック役と、ランス役の二人の俳優がそれぞれ演じてしまうのです!
公式のあらすじでも、「やがて心の闇に潜む悪魔的なサイコスリラーへと変貌していく──」といっているとおり、一体どういった映画的演出になるのか、ぜひ劇場で見ていただきたいところです!
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