第173回芥川賞、直木賞共に該当作はなし=7月16日午後、東京都千代田区(松井英幸撮影)

27年ぶり、芥川賞・直木賞「『該当なし』がダブル受賞」 書店POP「票割れする程の良作ぞろい!」

By - emogram編集部・87
ポジ・ネガ

日本文学振興会は16日、第173回芥川賞・直木賞の選考結果を発表しました。注目が集まっていた今回の発表ですが、芥川賞、直木賞とも「該当作なし」という異例の結果となりました。両賞ともに該当作がないのは1998年の第118回以来、27年ぶりということです。

選考委員の川上弘美さん(67)は「今回は試みのある候補作ばかりだったが、『ここをもう少し頑張ればなんとかなったのではないか』という作品が多かった」と語り、受賞作を出すか出さないかというよりも、各作品の書けているところと足りないところについて議論を重ねたという内幕を明かしました。

重版や文学賞の意義など、さまざまな波紋

今回の発表は日本文学振興会のウェブサイトや各メディアを通じて行われましたが、X上でも多数の意見が飛び交っています。

とりわけ出版業界への打撃を心配する声が多数みられましたが、それに対しては「受賞作がある回にくらべ、候補作の多くがおしなべて重版がかかっている」という内容の、ある書店による投稿も見受けられました。

過去に芥川賞に5回ノミネートされた作家の山崎ナオコーラさん(46)は「あー、大丈夫、大丈夫、文学賞なくても、仕事できるよ!」とXに投稿し、エールを送っています。

さらに、芥川賞が「該当作なし」の場合は雑誌『文藝春秋』に候補作の中から選んで掲載されるそうで、今回はどの候補作が掲載されるのかを案じる一般ユーザーの声もありました。

SNS上の感情

emogram編集部では、この話題に対するSNS上の感情を独自に分析し、ポジティブとネガティブの感情の比率を割り出しました。

感情分析の結果は以下の通りです。

主な「ポジティブ」の声(35%)

「賞の質を保とうとすると そういう事もあるんだろうな」

「未来屋書店さんの、候補作棚に置かれたPOPがこちら 『前代未聞 該当作なし 票割れする程の良作ぞろい!』 ウマイ!」

「残念じゃないよ(´・ω・`)最近の子が『該当作なしなんてことあるんだ』ってびっくりしてるじゃないの…(´・ω・`) 賞出しゃいいってもんでもないよ(´・ω・`)」

「『該当なし』がダブル受賞かー 凄いなー」

「全候補作を買って読めばいいってことですね!!!!」

文芸担当、泣いてます が! 当店には在庫も揃ってます!!  特に今回の直木賞候補作はどれも素晴らしい読み応えの物語たちです

「満遍なく売れる、と思えばいいじゃないですか」

主な「ネガティブ」の声(65%)

「芥川賞・直木賞が年に2回なってから、権威というか、ありがたみというかが無くなってきているので、たまには、こういうこともしてみよう…ということなのかなぁ? でも、逆効果になりそう…」

「芥川賞・直木賞ともに27年ぶりに該当作なし、という話題をつくるタイミングだったのかなという感じ」

「しょうもない作品にもあげてた事あったけどな。基準がわからん」

「芥川賞と直木賞どっちも不在となると 書店の売り上げは悪くなりそう」

「昔から該当作品無かったのに無理矢理賞だしまくって質が落ちまくり」

「賞に該当するような良い作品が一つもなかったの? そんなことある? 逆に良い作品だらけで選べなかったって言うのは選考委員の役割としていかがなものかと思うよ? 作家達がかわいそうじゃないかな」

「マスコミ、キレなかったのかな。 『会場来る前に言えよ!』」

「AI使って書いてるの見え見えなのばかりなんだもん。そりゃ該当ないよ」

まとめ

今回の分析では、ネガティブな声がポジティブな声を大きく上回る結果になりました。

ネガティブな声としては、選考基準や話題作りへの疑惑のほか、ノミネート作家たちをおもんばかる内容、マスコミや各書店の取り越し苦労について触れるものが概ねでした。近年、AI使用を公言する芥川賞受賞作家などもいることから、うがった見方をするコメントもありました。

ポジティブな声としては、元々それぞれの賞は格式の高いものだから、そういうタイミングもあってしかるべきという趣旨のものや、全候補作を読む機会になるといったものがありました。他にも、該当作なしを受けて、候補作すべてをフィーチャーするという各書店のコーナーづくりやPOPなどの健闘ぶりへの称賛も見られました。

ライターコメント

今回の「該当作なし」を受けて、SNS上では書店員たちの工夫をこらした取り組みに対する称賛の声のほか、候補作やノミネート作家に特に「推し」がいる人たちからの熱のこもった投稿が多く見受けられました。ある意味、「読み手側」に対しての動きや現代における文学賞のありかたを考える上で、大きな波紋を広げた回といえるかもしれません。

過去には、太宰治でさえ芥川賞の受賞は逃しました。SNS上では、山崎ナオコーラさんをはじめとする、何度もノミネートされたものの受賞には至らなかった作家たちに触れる声も。特に、4回ノミネートされた作家の舞城王太郎さんに言及する投稿が多く見受けられ、根強い人気とファンからの文学賞への問いかけを感じました。

太宰治にしろ、山崎ナオコーラさんにしろ、舞城王太郎さんにしろ、「受賞していない」ということがむしろ伝説になり、そういった先駆者たちが「文学賞だけが全てではない」ことを証明する存在になるのかもしれませんね。

今回の各候補者の今後の活躍も楽しみです。

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