DV被害に遭った男性の推移

「男のくせに」「情けない」男性のDV被害者が戦っているものとは?

By - emogram編集部ゆんち
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「DV被害者=女性」というイメージ、ちょっと待って。

11月19日は「国際男性デー」。この機会に、あまり知られていない問題について考えてみませんか。

実は今、男性のDV被害が注目され始めています。相談件数はここ5年で1.5倍。でも専門家は「増えた」のではなく「表面化した」と分析しています。

衝撃的な数字から見えてきたこと

警察庁のデータを見てみましょう。

2024年、男性から寄せられたDV被害の相談件数:2万8,214件

これ、全体の約3割を占めます。しかもこの5年間で1.5倍になっているんです。「え、そんなに?」って思いませんでした?私も最初、この数字を見て驚きました。

「自分が変われば」と信じていた

大村正人さん(34歳・仮名)の体験は、衝撃的です。でもこれ、決して特殊なケースではないんです。

約2年前から同居を始めた5歳年上の妻。最初は些細なことでした。

トイレにわずかな水滴が落ちていただけで激高

正座させられ、平手で顔面を殴られる

避けようと手をつかむと「私に暴力を振るうのか」と言い返される

「あなたは生きている価値がない」「クズ親から生まれたお前もクズ」──日常的に浴びせられる暴言。

エスカレートしていくコントロール

20万円ほどの借金を打ち明けたことをきっかけに、状況は悪化します。ウェブデザイナーとして年収約500万円、借金返済のめどは立っていたにもかかわらず、専業主婦の妻は「隠し事は許せない。あなたを変えるために一緒に戦う」とDVを正当化。

監視と支配が始まった…

スマートフォンや現金を取り上げられる

・在宅勤務を常に監視される

・給与はすべて妻が管理

・冷蔵庫を開けるにも許可が必要

・食事を抜かれるようになる

・体重は70キロ以上から40キロ台に。それでも大村さんは無抵抗を貫きました。

そして、倒れました。栄養失調で。

搬送された病院が異変に気づいて通報。今年5月、裁判所がDV防止法に基づく接近禁止命令を出し、ようやく解放されました。

大村さんは振り返ります。

「自分が変われば妻との関係も変わると思っていた。DV被害を受けている意識すらなかった」

なぜ、男性の被害は見えにくいのか

京都大学の伊藤公雄名誉教授(ジェンダー社会学)は、こう分析しています。

「潜在化していた被害が表面化し始めている。男性もDV被害に遭うことが報道などを通じて社会に浸透し、被害を訴えやすくなったのだろう」

「男なのに」という社会の目

一般的に、女性に比べて肉体的に優位にあるとされる男性。そんな男性が被害を訴えても、社会の共感を得にくい状況があります。

SNSでも、こんな声が目立ちました。

・「食事抜かれってイマイチ理解できない。外食できないのかな?」

・「バカ?子供じゃあるまいし。自分で買って食べられる大人だよね?」

・「飯くらい自分で食えよ男なら」

でも、これらのコメント、DVの本質を見落としています。DVは単なる暴力ではなく、精神的支配なんです。

女性加害者の「巧妙な手口」

男性のDV被害支援を行う一般社団法人「白鳥の森」(徳島市)の野口登志子代表理事は、あくまで一般論としながらも、こう指摘します。

「女性加害者は、近年のジェンダー意識を巧みに利用して相手を支配する」

よくあるパターン

■理想の押し付け

男性に仕事での”稼ぎ”を求める

・同時に「男性は家事や子育てもすべき」と高い理想を抱く

■暴力・暴言での支配

・理想と異なると、暴力や暴言で不満を爆発させる

■ジェンダーカードの悪用

・男性が反撃すれば「モラハラだ」などと逆に追及してくる

野口さんは続けます。

「男性被害者はパートナーの理想にこたえようとする人が多い。専業主婦が加害者になることが意外と多いことも特徴の一つです」

SNSの反応は複雑

この問題、Xでも大きな議論を呼びました。

被害経験を打ち明ける声

・「私も経験しました。その時は、死を覚悟したくらいです。今は、一人静かに暮らしていますが、あの日々は本当に地獄でした」

・「多くの人が、男女関係なく被害にあった男性を笑うんです。私も昔からそれに気づいていました」

社会の認識不足を指摘する声

・「増えてるんじゃなくて認知されるようになっただけですね。長年見て見ぬふりされていただけで」

・「男性へのDVは警察もどこも助けてくれないからなぁ。表に出ないだけでたくさんあるよね」

・「男性のDV被害が表面化しないのは、被害者を『自業自得』と非難することで抑えつけているから」

制度への疑問

・「嫁が包丁持って暴れる⇒制圧して警察呼んだらそれ男側の暴力になるからねって言われて笑った。その警察いわく男は逃げるしかないってよw」

・「法律が女性優遇ってことは、女性は強者ってこと。腕力は法律には敵わない」

でも、「自己責任」という声も

一方で、こんな意見も少なくありませんでした。

・「食事抜かれってイマイチ理解できない。外食できないのかな?」

・「だからといって栄養失調になるまで何もできないとか、なんか情けないな」

これらのコメント、DVの本質である心理的支配を理解していない反応と言えるかもしれません。

DVは「支配」である

ここで重要なポイントがあります。

DVは単なる暴力ではなく、相手を心理的に支配すること。

大村さんのケースを見てください。

・給与はすべて妻が管理(経済的支配)

・スマホや現金を取り上げられる(行動の制限)

・在宅勤務を常に監視(プライバシーの侵害)

・冷蔵庫を開けるにも許可が必要(生存権の制限)

・「あなたを変えるため」と正当化(洗脳)

「自分で食べればいい」という単純な問題ではないんです。心理的に追い詰められ、抵抗する気力すら奪われていく──それがDVの怖さです。

男性被害者が直面する「二重の壁」

男性のDV被害には、女性被害者とは異なる困難があります。

1. 社会の理解が得られにくい

「男のくせに」「情けない」という視線。被害を訴えること自体が、男性のプライドを傷つけます。

2. 支援体制が整っていない

DVシェルターは女性向けが中心。男性が逃げ込める場所が圧倒的に少ないのが現状です。

3. 法的な不利

反撃すれば「男性の暴力」とみなされるリスク。警察に相談しても、取り合ってもらえないケースも。

でも、変化は始まっている

暗い話ばかりではありません。確実に、社会は変わり始めています。

認知度の向上

この5年で相談件数が1.5倍になったのは、「被害を訴えやすくなった」証拠でもあります。報道やSNSを通じて、男性もDV被害に遭うことが社会に浸透してきました。

具体的な対策

SNSでは、こんな建設的な意見も。

・「言葉の暴力には録音、手を上げる方なら録画。慰謝料ガッツリ請求してさっさと別れろ」

・「DVは男性が女性に行うものという固定観念は、頭から捨て去る時代を迎えているのではないだろうか」

もし、あなたや身近な人が…

DV被害は、性別に関係なく起こります。もし自分や身近な人が被害に遭っているかもと感じたら:

すぐに相談を:

・DV相談ナビ:#8008(はれれば)

・男性のための電話相談(各自治体に設置)

・警察の生活安全課

・一般社団法人「白鳥の森」などの支援団体

証拠を残す:

・暴言は録音

・暴力は写真や動画で記録

・日記をつける

一人で抱え込まない:

・「自分が変われば」と考えるのは、DV加害者の思うツボ

・恥ずかしいことではありません

・あなたは悪くない

まとめ:誰もが安心して暮らせる社会へ

DVは、性別に関係なく起こります。「男性だから」「女性だから」という固定観念が、被害者を苦しめています。

大村さんは今、妻から解放され、新しい人生を歩み始めています。でも、まだ声を上げられない被害者が、たくさんいるはずです。

11月19日の国際男性デーをきっかけに、改めて考えてみませんか。

 

ライターコメント

性別に関係なく、DVは絶対に許されないと思っています。そして、被害を訴えた人を決して笑ってはいけないですよね。当たり前のことですが、改めて心に刻みました。誰もが安心して暮らせる社会、一人ひとりの意識から変えていけたら…と思います。

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