舞城王太郎の小説の映画版「NECK ネック」の一場面

覆面作家の舞城王太郎がXでまたバズった、24万いいねの書きだしとは?

By - emogram編集部87
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10月上旬、ある小説の書きだしがSNSで大きな話題となりました。

あるXユーザーが「#今読んでる本」として、「噂の書き出しに震えている」と、書きだし部分を紹介したところ、24万いいね、1.7万以上のリポストと大バズリ。

SNSでは「作家名やタイトルが気になる」という声のほか、衝撃を受けたという声が相次ぎました。

実はこれ、覆面作家の舞城王太郎先生が、2022年6月に刊行した「短篇七芒星」という短編集の中の「代替」という短編小説なんです。

いったい、どんな書きだしなのでしょうか?

「ろくでもない人間がいる。 お前である。」

「ろくでもない人間がいる。 お前である。」

一行目から、ものすごいパンチの効いた出足です。それからさらに続きます。

「くだらないことに執着して他人に迷惑をかける人間がいる。 これもお前である。」
「何を触っても誰と関わっても、腐敗と不幸をもたらす人間がいる。まさしくお前である。」

まだまだ、この程度では終わらず、さらに畳みかけてきます。

「マジでびびるほどだ。おいおい、神様はどうしてお前みたいなクソをこの世に配置したのだろう?」
「どのような側面においてもプラスとかポジティブとか前とか上とか善とか良とかとは反対の性質しかもたないお前が、どのような因果でここにいて…」

この冒頭部分だけでも、舞城作品を知らない人にとってはもちろん、往年の読者にとっても、思わずニヤついてしまいそうな舞城節がさく裂していますよね。

実は、この書きだしがバズったのは今回が初めてではありません。

2022年と2023年にも話題に

2022年と2023年にSNSで42万以上の「いいね」がつくなど話題となり、緊急重版が決定した有名な一文だったのです。

この一行目に、思わず身構えて刺さってしまう読者も多いと思いますが、実は、「お前」というのは、読者のことではないので、ご安心ください。

語り手である「俺」が〝ある「お前」〟を執拗に罵倒しながら描かれていく作品で、一人称でも、三人称でもない、二人称を用いた、舞城先生ならではの表現が研ぎ澄まされた、ファンの間で「すごい」と語り継がれている短編小説となっています。

覆面作家の舞城王太郎先生とは

<参考>舞城王太郎の小説の映画版「NECK ネック」の一場面

舞城先生については、1973年生まれ、福井県出身ということのみ公開情報で明かされています。

2001年に、「煙か土か食い物」でデビューし、講談社の新人賞メフィスト賞を受賞。2003年には「阿修羅ガール」で第16回三島由紀夫賞を受賞するも、授賞式には欠席しました。

独特の疾走感あふれる文体と常軌を逸したストーリー展開で知られ、芥川賞候補に複数回選出され、純文学、SF、ミステリーの領域でも高い評価を受けています。代表作にはほかに「ディスコ探偵水曜日」「熊の場所」などがあります。

2010年に上梓した「NECK ネック」は、映画、舞台、小説、さらにはツイッター(現X)上の連載小説など複数メディアで異なる物語を展開する先進的なメディアミックスプロジェクトで話題となりました。

SNS上の感情

「定期的にバズる」ともいわれる舞城先生の書きだしに対し、SNS上では、初めて知って興味を持つ声のほか、往年のファンからは懐かしむ声など、様々なコメントが寄せられています。

emogram編集部では、この話題に対するコメントを独自に分析しました。

分析の結果、コメントは大きく以下のように分類されました。

主な「興味・関心」の声(40%)

「噂の書き出しに震えている」

「普段本をあまり読むことはないがこの本は一度読んでみたい。 なぜか自分の事を言われているような気がする(笑)」

「あ。これ読みたいと思ってたやつだ。てか出だし最高すぎる」

「マジで本のタイトル教えて欲しい私である」

「これはつらい、でも読むべきなのかもしれない…」

主な「共感・感動」の声(25%)

「私もこれ読んだ 書き出しが凄すぎて、思わず読んでしまった いい読書体験だった」

「この引き込まれる書き出し、なんか既視感あるな?と思ったら『愛は祈りだ。』から始まるこれと同じ作者で草生えた。 この人は文字に力がある」

「この本マジで面白いから是非読んで欲しい 書き出しの代替はお前のクズっぷりと俺の割り切った感が両極端で読んでてちょっと悲しくなる」

「舞城王太郎先生の小説は本当に良い 書き出しがとにかく心惹かれる 「愛は祈りだ。僕は祈る」から始まる『好き好き大好き超愛してる。』も名作だと私は思う」

「舞城王太郎なつかしい。 短篇五芒星も面白いし、『煙か土か食い物』シリーズは当時自分が高校生だったのもあるだろうけど本当に読んでてワクワクしたな」

主な「批判・指摘」の声(15%)

「これ言っていいの岸辺露伴くらいしか許されないだろ」

「感嘆符の後に全角スペースを入れない人間がいる。舞城王太郎である」

「これちゃんとおもろいです? この1行で読者を引きずり込んだくせに後は別におもんなかったとかないです??ないなら読んでみたい」

主な「自己言及」の声(10%)

「一時期これをLINEのホーム画面にしてたんだけど、家族やら友達やら色んな人から『これって私/俺のこと言ってたりする….?』って不安そうな連絡来たの思い出した」

「自分の脳内言語化されてて泣いちゃう」

「ろくでもない人間がいる。私である」

「これで言葉責めされたらギャン泣きしそうである」

主な「ユーモア」の声(10%)

「こんなこと書くのは舞城王太郎とかかなと思ったら、ほんとに舞城王太郎だったwww」

「この話の凄いところは、 この1ページだけ見ると『流石に言い過ぎだろ』と思うじゃないですか なんと、2ページ目から『全然妥当だったわ』に変わります」

いや書き出しとんでもなく殺意高い本で笑う」

「舞城王太郎だ!!舞城王太郎はいいぞ!!!舞城王太郎を愛せ!!!」

まとめ

今回の分析では、本の書きだしに対する強い関心のほか、読みたいという欲求を示す意見が多く見られました。内容に感銘を受けた人のほか、読みたいと思った人がいる一方、校正の問題を指摘する批判的なコメントもありました。また、本の内容に対して感情的な反応を示すコメントも見られたほか、往年の舞城ファンからの舞城先生愛が伝わる声も多く寄せられていました。

ライターコメント

舞城先生は、デビューこそ25年近く前ですが、令和の今でも、新たな読者層を獲得し続ける、時代をまたにかけた作家なんだな、と思いました。20年以上前の青春ミステリー「世界は密室でできている」も、10月に舞台化されるということで、舞城先生の影響力を改めて実感しているところです。先生の覆面作家というスタイルや、口語文体、一人称や二人称は若いSNS世代の感覚にも合うのではないでしょうか。

筆者は、SNSが広がる以前に匿名ネット掲示板や占い師などをモチーフに、当時のインターネットらしさ満載の集合意識や妄想、仮想現実を描いた「阿修羅ガール」に衝撃を受けて以来、舞城先生のことを考え続けているので、この度、バズって本当に嬉しい限りです。もちろん、現代のインターネットに通じるところもあるのでおすすめの作品です。

そして、SNS上で多くの人の先生と作品に対するコメントを読めるのが、本当に幸せです!「代替」は、舞城王太郎という作家そのものをあらわしているような俊逸な作品なので、ぜひ読んでみてくださいね!

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